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新作ゲーム『スターフィールド』が開く新たなクラシックの世界...サウンドトラックの「スケール感は前代未聞」と評判

ニューズウィーク日本版 / 2023年9月29日 13時10分

新作ゲーム『スターフィールド』の画面 PHOTO ILLUSTRATION BY RAFAEL HENRIQUEーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES

<多くのゲームがクラシカルなサウンドを採用し、ゲームを通じて交響曲を初めて耳にする若者が増えている>

去る9月6日に発売された米ゲーム開発会社ベセスダの新作『スターフィールド』は、ファンの期待を裏切らなかった。キャラクターも宇宙船も思いどおりにカスタマイズでき、1000以上ある惑星のどこへでも行けて、いくつものストーリーを選べる。

サウンドトラックも同様に壮大で、音響ディレクターのマーク・ランパートに言わせれば、このゲームの音楽は「プレーヤーの旅の道連れ」であり、その「スケール感は前代未聞」だ。

宇宙空間を描く壮大なサウンドスケープ(音の風景)は、『スター・ウォーズ』や『2001年宇宙の旅』などの映画音楽として始まった。だが『スターフィールド』のようなゲームのインタラクティブな楽曲(作曲はイノン・ズール)は次元が違う。瞑想的なサウンドスケープを生み出す音楽言語を駆使し、好奇心をくすぐりながらリスナーを広大な宇宙へといざなう。目を閉じれば、オーケストラの生演奏を聴いているような気分になる。

【動画】新作ゲーム『スターフィールド』公式サウンドトラック

実際、ロンドン交響楽団はこのゲームが発売される前に、立派なコンサートホールで満員の聴衆を前に「スターフィールド組曲」を演奏した。私も指揮者だから、こういう楽曲には心が躍る。一般の人々を、今までになくクラシックの世界に引き寄せるからだ。

遠い昔から、音楽は私たちの暮らしに欠かせないコミュニケーションの手段だった。それがルネサンス期に芸術の1つのジャンルとなり、16世紀には美術と演劇を融合したオペラが成立。そして17~18世紀には音楽専用のホールができ、斬新で壮大な楽曲が作られるようになった。「交響曲」の誕生だ。

しかし19世紀後半になると音楽の聴き方や楽しみ方にも変化が生じた。ジャズのような新しい音楽に人気が集まり、ホールで聴く交響曲は上流階級のたしなみとなった。そして大衆の音楽と、いわゆる「クラシック」の間に越え難い溝ができた。だが『スターフィールド』で使われたような楽曲は、この溝を一挙に埋めようとしている。

ハードウエアの制約もあって、初期のゲーム音楽は電子的な「ピコピコ音」に頼っていた。しかし意欲的なプログラマーは、サウンドを通じてゲームの世界への没入感を高める方法を探り続けた。一方でハードウエアも進化した。

結果、今の作曲家は最先端のハードとソフトを駆使して壮大なサウンドスケープを描き出し、実際に超一流の演奏家を集めてサウンドトラックを録音できるようになった。

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