「中国とは付き合いきれない」傾向が強まる時代に、「中華」をどう考えるか
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月18日 11時20分
韓国とベトナムにおける「中華」
岡本 中華をどう考えるかには、大きく2つあります。
1つは中華に影響を受けながら、独自の路線を歩むケースです。その最たる例は日本です。ラーメンや中華料理を食べながらも、中華をほとんど誰も意識していない。しかし、中国に反感を持って罵るという今の日本人のスタンスです。
他方、中華をこそぎ落としつつも苦しむ世界もあります。その点を踏まえて、特集タイトルの中に「拡散」を入れました。野嶋剛先生には今回台湾についてご寄稿いただきましたが、特集を振り返ってみていかがでしょうか。
野嶋 今回の特集を読んでみると、どの国も共通して、拡散された中華をそれぞれが受け入れ、さらにそれを深化させている。各国の国内や地域の事情に従って相対化し、内在化させていくプロセスが見えました。
私は特に森万佑子先生の「朝鮮半島にとっての中華」と牧野元紀先生の「ベトナム――誇り高き南の中華」を印象深く読ませていただきました。
台湾や日本から見ると、韓国は習近平政権への距離がどんどん近づいているように見えます。しかし、そうではないらしいということが森先生の論考から分かりました。
森 習近平政権が成立してから韓国人の中国に対するイメージは下降の一途をたどっています。2013年に51%だった韓国人の習近平への好感度は、2021年には8%になっています。(出典:Gallup Korea第472号、2021年11月)
特に韓国の20代・30代は中国に対して強いアレルギーがあります。今年4月の調査では、20代・30代の91%が「中国に対して好感を持たない」と回答しました。これは北朝鮮に対する非好感度(88%)よりも高いものです。(出典:社団法人「正しい言論市民行動」、2030社会意識調査、2023年4月)
今の若い世代は、生まれたときには既にKポップやKカルチャーが世界に進出していました。そのため先進国の一角として、韓国は普遍的価値の追求において、つまり人権問題や公平・公正の問題、民主主義の問題で、中国に対して優位に立っているという感覚があります。
野嶋 そうなると、韓国における中華という概念の復興は難しいですね...。私は今回「台湾で『中華』は限りなく透明になる」というタイトルで、台湾において中華という要素が希薄化している、記号化していると説明しようとしました。これは牧野先生のベトナムの論考にもあるように、中華を相対化していくプロセスだと理解することもできます。
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