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「膠着状態」に入ったウクライナ戦争の不都合な真実...西側の支援はそろそろ限界か?

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月11日 12時30分

どちらの可能性がより高いかは、比較的容易に想像できる。ゼレンスキーの支持基盤はプーチンに比べればはるかに脆弱だ。ウクライナでは次の大統領選挙が来年の3月に予定されているが、予定どおりに実施されるかは不明だ。ゼレンスキーは選挙資金の不足を理由に実施の有無を明確にしていない。

もし、公正な選挙が行われれば、落選する可能性も十分あるだろう。ウクライナ国民がゼレンスキーを選んだのは、そもそも彼がロシアと交渉して、14年以来のドンバス紛争を和平に持ち込むことを公約に掲げていたからである。6月の世論調査ではウクライナ国民の大半は領土面での譲歩を支持していないようだが、だからと言ってロシアに勝利するまで戦争を継続するというゼレンスキーが再選されるとは限らない。国民は現実的な見方をしているものだ。

選挙の結果、ゼレンスキーが去るというシナリオがなくても、ロシア側がゼレンスキー政権と交渉を行う可能性は低いだろう。ゼレンスキーを追い落とすために、どこかのタイミングでウクライナへの攻撃を強化することもあり得る。ロシアは、ゼレンスキー政権が崩壊するか、合法的に交代するか、ウクライナに新たな政権が誕生するまで待つだろう。

ウクライナ支援継続は得策か

というのも、ロシア側の認識では、ゼレンスキーは米英の「傀儡」である。ラブロフは、米英を「人形遣い」と呼んでいる。すなわち、ロシア側の大きな戦略目標の1つは、ロシアの安全保障のためにウクライナから米英の影響力を排除することにある。このことは、ウクライナのNATO非加盟、中立化にとって必要不可欠な条件となっている。

西側供与の戦車で戦闘訓練をする合間に休息するウクライナ兵士たち ROMAN CHOPーGLOBAL IMAGES UKRAINE /GETTY IMAGES

仮に和平交渉が成功したとしても、英米がバックに付いたウクライナ政権が残る限り、NATO加盟や軍備増強などの動きが再開される可能性は残り、その場合には、ロシアは躊躇なく侵攻を繰り返すことだろう。

歴史を通じて、ウクライナはロシアと欧州の間の緩衝地帯であったが、今や、双方にとって危険な火薬庫と化した。それは、停戦しても変わることはない。なぜなら、アグレッシブなウクライナと、ウクライナのNATO接近を決して許さないロシアという構図に変わりがないからだ。

欧州にとってウクライナという火薬庫を維持してまで、ウクライナのNATO加盟が必要なのだろうか。親ロ的なウクライナの時代に、東欧諸国が今以上に大きな脅威にさらされていたという事実はない。むしろ、ウクライナがNATOに加盟したほうが、安全保障上の問題がはるかに大きくなることは、全てのNATO加盟国が理解しているはずだ。そもそも、NATOは安全保障組織であって、自由民主主義を拡散するための政治組織ではない。安全保障を脅かすような拡大は本末転倒である。すなわち、ウクライナのNATO非加盟という条件で交渉を行うこと自体は、不合理な判断ではないのだ。

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