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ハマスのイスラエル一斉攻撃......なぜ攻撃は始まった? 今後はどうなる?

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月11日 17時0分

今回の攻撃ではイスラエル側に既に1200人を超える死者が出ており、開戦後4日を経過してもまだパレスチナ側の死者の数を上回っている。ネタニヤフ首相が「戦争」と呼んだのは、こうしたイスラエル側にとっての非常事態を指したものと考えられる。

2000年に第二次インティファーダが起きて以来、イスラエルはパレスチナ自治区の領域にやや食い込む形で分離壁を建設しており、検問所を強化して、両者の間の往来は統制下におかれてきた。パレスチナ自治区の人々の存在は、イスラエル社会の外側で接触のない世界での出来事となり、「テロ」が持ち込まれる危険も過去のものとなりつつあった。

近年、情勢はやや不安定化しつつあったとはいえ、イスラエル治安機関が維持するセキュリティに対しては絶対の信頼感が築かれていたといえるだろう。その平穏が破られ、多くの市民の犠牲が出たことの脅威感は相当大きなものであったと考えられる。これをイスラエルの「9.11」だと呼ぶ人々もいる。

多くのイスラエル市民が人質に

第三に、今回の作戦では多くのイスラエル市民が拘束され、パレスチナ武装勢力の側で人質にとられるという異例の展開となった。かつてのイスラエル人の人質としては、ガザ地区での戦闘で拘束された兵士で、5年半後に釈放されたギルアド・シャリートが有名だ。たったひとりの人質をめぐり数年がかりで交渉が続けられ、1,000人ものパレスチナ政治囚と引き換えに釈放された経緯からは、ハマースは人質の価値を熟知しているといえよう。ハマースの高官ムーサー・アブー=マルズークは100人以上のイスラエル人を拘束したと発表し、これに加えてイスラーム・ジハードも30人を拘束したと発表されている。

今回の人質は、パレスチナの全政治囚の釈放を可能にできる規模だともされるが、問題はこうした脅しに基づく交渉に対してイスラエル側がそもそも応じるかである。カタールなどの仲介により、既に人質釈放交渉は始まっているとの報道もあるが、イスラエル政府はこれを否定している。

とはいえ人質の存在が、パレスチナ側への反撃の大きな足かせとなっているのも事実だ。ガザ地区への予告のない攻撃に対して、ハマースは人質を処刑し、その映像を公開すると発表しており、彼らの存在は文字通り「人間の盾」となっている。そのため、これまでのような地上軍の侵攻を簡単に開始することができない。ハマース側は、ガザ地区でのイスラエル軍による空爆で、既に数名の人質が死亡したと発表しているが、真偽のほどは不明だ。いずれにせよ、自国民の命を危険にさらすリスクのある中、どのような対策を取るのかイスラエル政府は慎重に検討を続けているものと思われる。

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