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ルーマニアの裏側......映画『ヨーロッパ新世紀』が映し出す政治文化と民族対立

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月12日 17時30分

この場面はひとつのポイントになっている。なぜなら、その後、村人たちに影響を及ぼしていくのは、ネットのコミュニティ・フォーラムだが、そこでも少数派と多数派の反応の違いが露わになっていくからだ。

コミュニティ・フォーラムに、最初に「奴らがやるのは盗みと殺しだけ」、「一人雇えばじき群れになる」、「病気を持ち込む」などのコメントを書き込むのはハンガリー人だ。そして、これに対してルーマニア人から、「差別するのはハンガリー人」、「ハンガリー語学校を閉鎖しよう」、「その2人よりハンガリー人が去れ」といった反応が現れる。

ここで思い出したいのは、先ほどの最初の引用にある「ルーマニア人と少数民族(おもにハンガリー人とロマ)」を「相互に、またそれぞれの内部で反目させる」という部分だ。

地元のパン工場の女性オーナーは、彼女から経営を任されているシーラと同じハンガリー人だ。彼女たちはEUから補助金を得る条件を満たすために、最初は村に求人広告を出していたが、村人はより報酬がいい西欧への出稼ぎを選ぶため、やむなく最低賃金でも働く外国人労働者を雇用した。しかしそれが思わぬ結果を招き、ハンガリー人同士が対立していく。

さらにマティアスも、スリランカ人の雇用を守ろうとするシーラと、彼らを排斥しようとするハンガリー人の仲間との間で、難しい立場に追いやられ、居場所を失っていく。

言語、政治文化、そして葛藤

ムンジウ監督は、言語も含めた緻密な構成や長回しなどを駆使して、表面的な平和に潜んでいる克服し難いルーマニアの政治文化を見事に炙り出している。

『ヨーロッパ新世紀』
2023年10月14日(土)よりユーロスペース他にて全国順次公開
(C)Mobra Films-Why Not Productions-FilmGate Films-Film I Vest-France 3 Cinema 2022

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