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サステナブル建築を先導する世界の最先端モデルとは

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月13日 19時50分

パワーハウス・ブラットルカイアは地域のグリーン化の要 SNØHETTA

米オレゴン州ポートランドのオフィスビル「PAEリビングビルディング」も超サステナブル建築の一例だ。設計はZGFアーキテクツ社。断熱工法と可動式窓による換気で、既存のオフィスビルに比べ冷暖房などの消費電力を80%削減でき、集めた雨水を処理して建物内で利用している。

ただ、太陽光パネルの設置スペースが限られているため、敷地内では十分な発電ができない。そこで近隣の低所得者向け集合住宅に対価を払って設置し、集合住宅とこのビルへの供給電力を確保している。
「個々の建物だけでなく、地域的な観点から電力生産を考える」ことが問題解決につながると、ZGFのキャシー・バーグは言う。

再生可能エネルギーの利用コストはどんどん下がっている。特に太陽光発電の低コスト化は目覚ましく、米エネルギー省によると年間約10%のペースで下がっているという。

「まずは省エネの徹底」

「経済的な観点からも再生可能エネルギーはより賢い選択肢になりつつある」と、米オバリン大学のデービッド・オア名誉教授は言う。

おかげでエネルギー・ポジティブな建物の設計・施工も以前よりは取り組みやすくなった。太陽光パネルの進歩に伴い、今後さらにハードルが下がるだろう。

今の太陽光パネルは10年前と比べ発電効率が約50%向上していて、試作段階だが今より2倍も効率がいいパネルも開発されている。

電子機器の進歩で太陽光発電に必要な部品の小型化・軽量化が進むとともに、素材の技術革新で美しい半透明なコーティングで部品を覆えるようになった。今ではこうした部品を組み込んだ太陽光パネルを建物の外装材として使用でき、既存の建物の屋根や外壁に設置することも可能だ。

ドイツのボーフムでは、1930年代に建てられた集合住宅12戸に太陽光パネルが設置された。1平方フィート(約0・09平方メートル)当たり45キロワット時の電力を供給し、余剰分は地元の送電網に売り戻す。

やはりエネルギーを収集する技術として急速に進歩しているのがヒートポンプだ。ヒートポンプは空気や土壌、水などの熱を取り込んで循環させるシステムで、熱媒体を圧縮・膨張させることによって温度を上昇もしくは降下させ、熱を移動させる。

ヒートポンプの動力は、天然ガスを燃焼するのではなく送電網からの電力を使うので、排出ガスを削減でき、従来の電気暖房に比べて効率は4倍高い。最新のタイプは新しい種類の熱媒体と強力な圧縮機を採用し、寒冷地など氷点下でも機能するようになった。

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