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サステナブル建築を先導する世界の最先端モデルとは

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月13日 19時50分

昨年完成した米ボストン大学のコンピューティング・データサイエンス学部の新校舎は19階建てで高さ約90メートル、広さ約3万2000平方メートル。地元の厳しい冬を乗り切るために、全面的にヒートポンプを採用している。

超サステナブル建築において、エネルギーを生産することは「2番目の段階」だと、ZGFのバーグは言う。「最初のステップは、建物が必要とするエネルギーの量そのものを減らすことだ」

熱の出入りを防ぐ最新の断熱材や効率的なLED照明の導入は、近年の新築の建物では当たり前になった。多くの既存の建物にも後から設置されている。

設計段階で日照や通風を管理する機能を組み入れ、エネルギー需要をさらに減らすこともできる。ZGFが手がけたカリフォルニア州大気資源委員会の新しい本部ビルは、巨大な天窓から入る太陽光を電動シェードで調整し、ファンが涼しいエリアから暖かいエリアへと空気を移動させ、快適な室温を維持する。自然の換気システムとして偏西風を取り込むビルも登場していると、バーグは言う。

スマートでグリーンに

パワーハウス・ブラットルカイア、消費量以上に電力を生産する SNØHETTA

エレクロトニクスの頭脳は、新築でも既存の建物の更新でも、超サステナブル建築の実践にますます大きな役割を果たしている。多くのスマート・ビルディング・システムの中核を担うのは、人が建物内のどこにいて、どこにいないのかを追跡するセンサーだ。「冷暖房システムが4階に誰もいないことを察知すると、そこに送る冷暖房の空気や照明を大幅に減らす」と、スマート・ビルディング・システムを製造しているジョンソンコントロールズ社のケイティ・マッギンティCSO(チーフ・サステナビリティー・オフィサー)は言う。

「最近の自動車は、いわば車輪の上にコンピューターが載っているが、そうしたデジタル化は建物にはほとんど広まっていなかった」

スマート・ビルディングは送電網の価格変動を分単位で監視しながら、価格の変動を利用して冷暖房のタイミングを調整する。例えば、電気自動車を利用する居住者が増えたら、バッテリーに充電した電力を価格のピーク時に送電網に売り、価格が下がったときに再び充電するようなことも考えられると、マッギンティは言う。

敷地内に太陽光発電があれば、その電力も持続可能なシステムに取り入れることができる。晴天時に発電した電力の一部をバッテリーに蓄え、曇天時や価格が上昇したときにその電力を使用したり、送電網に売ったりする。

新築だけでなく改築の際にも、効率の高い太陽光パネルやヒートポンプ、断熱材を採用すれば、建物が消費する量以上の再生可能エネルギーを生成して、余剰分を外部に提供できる。既に多くのビルが余剰分を送電網に売って、再生可能エネルギー関連の目標達成を手助けしている。トロンハイムのパワーハウス・ブラットルカイアのように、近隣のビルや施設と再生可能エネルギーを直接、共有する契約を結ぶビルも増えている。

再生可能エネルギーのコストが下落し続けるなか、超サステナブル建築の実践があらゆる規模や予算のプロジェクトに浸透して、建物が気候変動にリンクする負債ではなく、資産になることが期待されている。



デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)


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