世界一幸福な国は2035年カーボンニュートラル達成へまい進 社会変革を目指すフィンランドのスタートアップ企業
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月16日 17時20分
細胞培養で、環境破壊や食料危機に備える
食の分野の身近な環境問題対策というと、代替肉を中心とした植物製代替食品(ミルク、ヨーグルト、デザートなどの代替品)が思い浮かぶ。代替食品は、CO2排出量が高い畜産を減らすための良策だ。ヨーロッパでの代替食品の広まりは相当なものだ。ヨーロッパ13カ国の売上は、2020年から2022年の間に21%成長し、過去最高の58億ユーロに達した。それでも、こうした持続可能な食品が市場全体に占める割合はまだ小さいという。
日本でも植物製代替食品への注目は高まっているが、健康によさそうという関心の方が強いかもしれない。フィンランドでは、CO2削減と資源の保護、食料危機に対処するための代替食品の研究に熱が入っている。
フィンランド国立技術研究センター(VTT)の研究員たち。様々な、持続可能な食品のサンプル。
ヨーロッパ有数の研究機関といわれるフィンランド国立技術研究センター(VTT)の研究分野は多岐に渡る。ここで、持続可能な食品の開発の様子を見た。持続可能な食品は大きく2つに分けられる(昆虫食は除く)。いま述べたように植物から作る代替食品、もう1つは細胞を人工的に増殖させてタンパク質(プロテイン)と脂質を生産する細胞農業(細胞培養)だ。
日本では培養肉や培養魚の開発が報じられている。VTTでは多数のプロジェクトがあり、目下、来春までの予定で国内10社と共同でプロジェクトを進めている。細胞培養で乳製品や主に養殖向けの飼料を作るといった計画だ。ちなみに、日本でも大きく報道された細胞培養で成功させたコーヒー粉末もVTTのプロジェクトだ。
各プロジェクトでは実現可能か、本当にサステナブルかといった、細胞農業を定着させていく戦略も練る。
森林の土壌にいる菌からたんぱく質を
Solar Foods社の微生物は、この機械の中で増殖する。乾燥させると黄色いプロテイン「Solein」になる。粉の写真©Solar Foods
日本で一般に親しまれているプロテインの粉は、牛乳や大豆が原料だ。一方、ソーラー・フーズ社(2018年設立)のプロテインの粉は、フィンランドの森の土壌にいる菌を原料としている。数え切れないほどの微生物の中から選んだ1つの菌に栄養分を与え増殖させる。光合成の20倍効率的なプロセスだという。それを乾燥させると、粉状の黄色いプロテイン「ソレイン」が出来上がる。「ビールやワインと同じ製造法です」とCXO(Chief Experience Officer=最高経験責任者)のラウラ・シニサロさんは説明する。
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