欧米との協力関係の陰に潜む、インドのネット世論操作の実態とは?
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月16日 17時0分
EUに対しては非公式グループを作り、EU議会内や外部で会見やイベントを実施した。また、EU Chronicleというメディアを作り、11人のEU議員から論説の寄稿を受けた。
こうした一連の活動をインド国内および世界に拡散したのはインドの通信社ANI(Asian News International)だった。ANIはまた、これらの偽メディアへのニュース提供もしていた。
注目すべきは、EU DisinfoLabの調査結果はメディアに取り上げられたものの、EUおよび各国の行政や司法の動きが鈍かったことだ。
おそらく中露でこれと同じことが露見すれば、国家由来として批判される可能性が高いが、インド政府の関与についてはきわめて慎重で確認できないという結論になっていた。そのため、さまざまなネット世論操作に関する研究ではインドの国外に対する活動はほとんど取り上げられず、統計にも記載されない。もちろん日本のメディアではほとんど取り上げられていない。
欧米各国の慣例にのっとって申しあげておくと、筆者はインド政府が関与していると言っているわけではない。そもそも欧米の専門家たちが結びつけられない、慎重に判断すべきと言っているのだ。ただ、インドを利するような活動を行っているインドの組織が多数あることは確認されている。もしこれが中露だったら、中露の政府関与を指摘する人は少なからずいただろうというだけの話だ。
さらに気になるのはIndian Chronicles以降、大規模な暴露がないことだ。Indian Chroniclesへの対応で欧米はインドに対して忖度するというシグナルを送ったので、インドがやめるはずはなく、より広範囲の活動を行っている可能性の方が高い。実際、欧米のメディア以外ではネットあるいはそれ以外の影響工作に関する記事が散見される。しかし、欧米以外のメディアの報道が欧米に届くことは稀だ。
欧米各国とSNSプラットフォームから忖度を受けて自由にネット世論操作や連動した工作活動を行えるメリットを生かして、インドは中露と並ぶネット世論操作大国でありながら実態を知られることがない。
インドの政権は右派過激主義
インドのもうひとつの重要かつ危険な特徴は政権与党が支持するHindutvaだ。Hindutvaは宗教的な側面が強調されることも多いが、実態としては右派過激主義(RWE)の特徴であるナショナリズム、人種差別主義、外国人嫌悪、反民主主義、強い国家、陰謀論、マイノリティへの攻撃を持つことが最近の研究「Identifying Themes of Right-Wing Extremism in Hindutva Discourse on Twitter」で明らかになっている。
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