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バイデンの必死の仲介で、ガザ危機の出口は見えるのか?

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月19日 11時50分

当初、バイデンはこうしたメッセージを、ヨルダン、エジプト、ファタハにも同意させて宣言する計画でしたが、結果的に1人で宣言することになったのです。

17日の事件の真相は分かりません。イスラエルにもハマスにも動機はあります。イスラエルは、人道危機を恐れてガザ北部侵攻を控えていますが、このままではガザへの圧力が効かなくなることを恐れて、一線を超えた空爆を行うことには彼らなりの合理性があります。また、バイデンがアラブ諸国との会議を成功させては、政治的立場が弱まるので会議を潰したいという計算も成立します。

一方で、ハマスの側はイスラエルが退避勧告を出している中で、爆発が起きれば、そこまでは意外と冷静だったアラブ諸国が憤激して、自分たちに有利な政治状況が作り出せると思っていたかもしれません。そうした中で、バイデンが、あらゆる諜報を動員して「第三の下手人説」を強く主張したのは注目に値します。

支援物資の搬入については、既に人道危機が始まっている可能性の中では、とにかくアメリカとして強く主張して、例えばエジプトなどの協力を引き出そうとしているのでしょう。実際にエジプトはこの働きかけに反応しています。

一連の会談や会見と並行して、バイデンは東地中海に空母打撃群を2セット派遣するというこれも異例の軍事的措置を取っています。これは、北部のレバノン国境を中心に介入のチャンスをうかがう原理主義勢力ヒズボラへの強いプレッシャーをかけるのが目的です。

では、バイデンはどうして、そこまで今回の危機の解決にこだわるのでしょうか。それは、米国内が「イスラエルへの連帯」と「ハマスへの憎悪」で団結しているからではありません。むしろ反対だからです。

民主党支持派の中で、特に若い世代は格差問題に敏感です。ですから、今回の危機の背景として、ハイテクや金融など新しい経済で成長するイスラエルと、人口の50%が18歳以下でありながら高い失業率に苦しむガザの落差にも鋭い目を向けています。仮にバイデン政権が、今回の危機への対処を誤ってしまい、ガザで大規模な人道危機が起きてしまうと、彼らは民主党の内部から主流派への激しい批判を始めるに違いありません。それは、バイデンとしては絶対に避けねばなりません。

一方で、共和党も分裂しています。特に下院議長の座を狙って、トランプと相談しながら議会を機能不全に追い込んでいるジム・ジョーダン議員などの強硬派は、口ではイスラエル支持とか、イスラム入国禁止などと言っていますが、本音の部分は「完全なる自国中心主義」であり、中東のトラブルへの関与すら冷淡です。

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