「NASAに履歴書を11回送り続けた」...貧しい移民労働者の子がつかんだ「宇宙飛行士の夢」
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月26日 14時20分
<「諦めなかったから宇宙飛行士になれた」...農場労働者の子供が逆境をはねのけ、宇宙へ旅立つまで>
農場労働者の一家で育った私たちきょうだいは子供の頃、農場の仕事に合わせて毎年季節ごとに住む場所を転々としていた。カリフォルニア州南部から中部へ、そして北部へ、さらには親の祖国であるメキシコへ、という具合だ。
こうした生活には、ほかの子供たちにはない苦労が付いて回った。せっかくできた友達と別れて引っ越しをし、その都度、新しい環境に適応しなくてはならなかったのだ。
大きな転機が訪れたのは、小学2年生の時だった。学校の先生の助言により、私たち一家は、教育環境を安定させるために1カ所に腰を落ち着けて暮らすことになったのだ。しかし、それに伴い、厳しい冬の時期には農場の仕事で収入を得る機会が減り、一家の生活は経済的に一層苦しくなった。
私たちが暮らしていたのは、低所得層中心の地区。経済面の理由により、多くのことを諦めなくてはならなかった。それでも、両親に教育と勤勉の大切さをしっかり教えられていたこともあって、私は幼い頃から学ぶことへの強い意欲を持っていた。
宇宙飛行士になりたいという思いが芽生え始めたのは、こうした子供時代のことだった。宇宙に関する本を読みあさり、関連のドキュメンタリーも片っ端から見た。
私は宇宙空間の広大さに魅了された。そして、選ばれた一握りの人間の1人として、地球を飛び出して宇宙を旅したいという思いが寝ても覚めても頭から離れなくなった。
電気工学を学びエンジニアになり、やがて夢を追求するためにNASAに履歴書を送り始めたが、不採用が続いた。それも1度や2度ではない。その回数はなんと11回を数えた。そのたびに、私は打ちのめされて決意が揺らぎそうになった。それでも両親と妻の励ましもあり、どうにか気力を奮い起こして頑張り続けることができた。
そしてついに、夢に見続けていた瞬間がやって来た。宇宙飛行士養成プログラムに選抜されたという知らせが届いたのだ。このとき押し寄せてきた感情は、言葉ではとうてい説明できない。
ようやく、諦めずに粘り強く努力し続けてきた日々が報われたのだ。とても現実のこととは思えなかった。宇宙を目指した人生のクライマックスは、スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗して微小重力空間で浮遊したときだった。
ISSで過ごした13日間は驚きと学びと内省の日々だった NASAーHANDOUTーREUTERS
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