ポーランドのエネルギー革命、原発への巨大投資をもたらす過去の幻影
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月27日 14時27分
次期政権を率いるかもしれない市民連立は、2029年末までに主な電力源を石炭から風力、太陽光と原子力に移行させると宣言している。
とはいえ政権交代によって、ポーランドの石炭使用の段階的廃止が加速されるかどうかは分からない。現在は49年までの廃止が計画されている。
この目標は、もっと早めなければEUの気候変動対策の妨げとなり、ポーランド経済にも打撃が及ぶだろう。これまでポーランドは家庭用太陽光パネルの普及という小さな革命を達成しながら、発電所規模の太陽光発電施設や風力発電施設、次世代送電網や蓄電技術の展開には着手しようとしなかった。
「政府はエネルギーの移行を一貫して妨げてきた」と、シンクタンク「インストラト」のミハル・ヘトマンスキ所長は言う。「基本的に政府は、原子力を導入するまでは石炭で賄うという考え方だ」
筆者はギブルジェチェトウェルティニュスキーと会ったときに、アメリカで過去45年間に建設・運用された原発はわずかしかないと話した。これは原子炉の建設に法外なコストがかかるためだ。
アメリカで運用された最も新しい原発は、米ジョージア州のボーグル原発。そこにある2つのAP1000原子炉は、ずさんな管理や監視の不備から建設費用が250億ドルを上回り、主契約業者のウェスティングハウス(ポーランドの契約相手と同じ企業)が一時、経営破綻に陥る事態を引き起こした。
アメリカが建設費用を捻出できないのに、ポーランドはどうやって108基の原子炉の建設費用を賄うのか。私のこの問いにギブルジェチェトウェルティニュスキーは、政府が460億ドルを拠出予定で、それに加えてアメリカの援助もあるはずだと説明した。
さらに彼は、14年のロシアのクリミア併合以降、ポーランドはロシア産の化石燃料から速やかに脱却したと説明。最後に、原発の展開は極めて迅速に行えるだろうとも真顔で語った。
大型原子炉は建設から稼働開始まで約7年半、より小型ならはるかに短期間で可能なのだという。
夢の後押しをする理由
この期間の見通しについて、彼は極めて楽観的だ。だがヨーロッパで15年ぶりに建設されたフィンランドの原子炉オルキルオト3号機は、建設開始から稼働までに17年を要した。これは当初の計画の3.5倍に当たり、建設費用も当初予定の3倍近くに膨らんだ。
より小型な原子炉SMRについては、同様の技術を使用した原子炉はいまロシアと中国の計2基しかない。SMR建設の認可を取得しているの米ニュースケール社だけで、大口投資家が見つからなければ試験導入プロジェクトを進められない。
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