1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

白砂青松の海岸林よりも雑木林が津波に強い? 横国大が東日本大震災前後の航空・衛星写真を分析

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月28日 9時40分

調査は航空写真に基づいて、津波前後の樹木被覆(そのサイトを樹木がどれだけ埋め尽くしているか)の変化の程度を 0(変化なし)から10(91~100%)に分類しました。ここで「10」は、津波によってほとんどの樹木が倒されて残っていないことを示しています。

分析の結果、津波前の樹木被覆、津波の高さ、敷地の標高は、津波発生後に残っている樹木の有無に影響を与えていませんでした。樹木が残る可能性に最も影響していたのは樹木の種類(植生)で、クロマツ単植林に比べて、広葉樹とクロマツの混交林の方が津波による被害が少なかったことが明らかになりました。

さらに、広葉樹種とクロマツの空間分布が複雑な混交林は、単純な混交林よりも津波による被害が少なかったことが分かりました。つまり、「クロマツ+広葉樹の大きな群生の林」は「クロマツと広葉樹が分離して植えられている林」よりも津波被害が少なく、「クロマツが優勢+広葉樹の小さな群生の林」と比べても有意差が見られました。

調査から得られた知見は、海岸林をクロマツ単植から混交林に移行することにより津波をより食い止めることができ、居住地域での被害が軽減される可能性を示唆しています。研究チームは、「樹木の種類によって根の形態や成長パターンが異なるため、混交林はより複雑な空間構造を持つためではないか」と考察しています。

近年、海岸林は、防災だけでなく海岸地域の生物多様性の保全や二酸化炭素の固定機能などの面にも注目が集まっています。クロマツ林から混交林への移行は、キノコなどの菌類や動物の多様性にも貢献するでしょう。環境への意識が高まった21世紀に植栽された海岸林は、数百年後に白砂青松に代わる新たな景観を生むかもしれませんね。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください