デジタル紛争の新たなステージ:イスラエルとハマスの情報戦が示すサイバー戦の進化
ニューズウィーク日本版 / 2023年11月7日 14時11分
さらにXのノート(発言に対して他の利用者がコメントする機能でモデレーション効果も期待されていた)を書いたアカウントの80%は「役にたった」という評価を受けたことがなく、そもそも「役にたった」というステータスに達したノートはたった7%に過ぎなかったことが、スタンフォード大学Internet ObservatoryのJournal of Online Trust and Safetyに掲載された調査で明らかになっている。
EUはXとMetaに対して警告と要請を行った。従わない場合、EUが調査を行い、最近成立したDSA法の違反が認められると高額の罰金を課される。
この混乱は紛争という特殊な状態だけがもたらしたものではなく、イスラエルとハマスのいずれもネット世論操作に長けていることも要因のひとつだ。そのうえ、インドやイランが干渉している痕跡もあって、情報の真偽はもとより、情報発信者の正体と目的もわかりにくくなっている。
インドが世界的なネット世論操作大国ではあることは前回の記事でご紹介した。今回の紛争に関してインド由来が疑われるネット世論操作活動をデジタルフォレンジック・リサーチラボが確認している。同組織はこの分野で世界的に有名だが、正体も目的も明らかにはできなかった。ただ、インドに関係する誰かが意図的に操作を行おうとしていたことだけが確認されている。インドへの忖度を感じるのは筆者だけだろうか? 中露であればここまで曖昧な結論にはならなかったような気がする。
ハマスのサイバーオペレーション
サイバー空間は充分な装備を持っていない非国家アクターでも戦いを展開しやすい領域である。ハマスもサイバー空間での活動を重要視している。ハマスのサイバー能力はグリーンハット程度とアメリカのシンクタンクである大西洋評議会は推定している。グリーンハットというのは、耳慣れない言葉だが(実は筆者も初めて聞いた)、新規の参加者で洗練されていないが影響力を与えることに貪欲で学習するハッカーを指す。
日本以外のほとんどの国ではサイバー攻撃とデジタル影響工作やネット世論操作は一体のものと考えられている。そこで本稿では両方について触れることにする。なお、出典元については長くなるため拙ブログに掲載した。
ハマスのサイバー攻撃の中心を担っているのは軍事部門アル・カッサム旅団のサイバー部隊Al-Quds Electronic Armyと言われているが、ハクティビストなども参加しており、ハマス自身にも全体像がつかめているわけではなさそうだ。
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