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デジタル紛争の新たなステージ:イスラエルとハマスの情報戦が示すサイバー戦の進化

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月7日 14時11分

電気を使用できるのは1日平均11時間程度という電力不足など基本的なインフラ不足に悩まされていながらもハマスのサイバー能力は成長を続けている。2018年にはイスラエルが「ブロークンハート」と名付けた作戦が行われた。ハニートラップでイスラエルの兵士にマルウェアをインストールさせて、情報を盗み出す作戦だ。イスラエルでは18歳から兵役を義務づけられているため、その若年層を狙った攻撃だ。ハマスのサイバー部隊は、さらにGoogle Play Storeに2つの出会い系アプリを登録し、兵士たちから情報を盗み出した。

2018年の夏にはイスラエル向けに2つのアプリを立ち上げた。1つは、開催中のワールドカップのサッカー情報をリアルタイムで伝えるもので、もうひとつはガザからの砲撃をイスラエル人に警告するためのロケット弾警告アプリだった。砲撃の警告アプリはハマスの実際の攻撃に合わせてアプリストアに登録されており、イスラエル市民の不安と混乱につけ込んだものだった。また、ジョギングアプリも作り、ガザの境界付近で兵役に就いているイスラエル兵の電話番号を特定していた。

2019年と2021年の二度にわたってイスラエルはハマスのサイバー攻撃能力を殲滅するために空爆を行ったが、その後もハマスからのサイバー攻撃が続いていることから殲滅にはいたっていないことがわかる。一説には空爆を避けるためにトルコに拠点を設けて移ったという説や近隣国の支援者の協力を得ているという説もある。

ハマスは以前からサイバー面に関してイランの部隊(Islamic Revolutionary Guard Corps=IRGCのQuds Force)の支援を受けていることが知られている。今回も連携している可能性が高く、ハマスがTelegramで配布していたアプリを解析したRecorded FutureのInksiktグループはイランの関与の可能性があることを発見している。

今回の紛争が始まると、すぐにロケット攻撃に関する情報やアラートのサイトに対してDDoS攻撃が行われた。以降、新聞とメディアのサイトがDDoS攻撃の主な標的となって56%を占めている。次いでIT産業34%、その次は金融企業、4位は政府機関サイトだったことがCloudflare社によって明らかにされた。

多くのSNSプラットフォームで、ハマスに関連するアカウントが排除されているが、SNSは単体ではなく、総体として活用されており、特定のSNSプラットフォームからアカウントを排除してもその影響力を消すことはできない。2020年のアメリカ大統領選において、大手SNSプラットフォームや関係機関は偽情報を対策を講じ、ロシアなどの干渉排除を試みた。しかし、翌年2021年1月にはアメリカ連邦議事堂が暴徒に襲撃されるという未曾有の事態を招くこととなった。大手プラットフォームから排除された人々は小規模プラットフォームに集まり、そこでの発言が大手プラットフォームに拡散していくという構造ができていたのだ。アメリカのシンクタンクNEW AMERICAが明らかにしている。

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