【スクープ】中国のAI研究者に米政府が3000万ドルを渡していた...朱松純の正体、あの「千人計画」との関係
ニューズウィーク日本版 / 2023年11月10日 11時48分
なお本誌の知る限り、朱は現時点でいかなる法令違反にも問われていない。また朱自身や彼の所属先からのコメントは得られていない。
米中から資金を二重取り
本誌の調べでは、朱に助成金を出していた政府機関には国防総省の防衛先端技術研究計画局(DARPA)や海軍、陸軍が含まれる。
朱は統計学とコンピューターの専門家としてUCLAに18年間在籍し、2020年に中国に帰国するまでの約10年間、アメリカ政府の資金提供を受けていた。また国防総省の助成金ウェブサイトによると、帰国後の21年にも2件の助成金が支給されている。
1件は「自律型ロボットや捜索・救助任務など、国防総省にとって重要」な「高次のロボット自律性」の研究で、総額69万9938ドル。
もう1件が「地上および空中のセンサーによる情報収集・監視システム」のための「認知ロボットのプラットフォーム」構築を目的とする研究で52万811ドルが支給されていた。いずれも米海軍研究局からのもので、筆頭研究者に朱の名前がある。
「中国は巨大なシステムを通じて、アメリカ政府の資金で行われた研究から技術やノウハウを引き出している」と警告するのは、非営利団体「センター・フォー・リサーチセキュリティー&インテグリティ」のジェフリー・ストッフ所長。
さらに深刻なのは資金の「二重取り」だと言う。アメリカの公的資金を得ていながら、同じ研究で中国政府の資金も受け取り、中国の利益のために働いているケースだ。
中国の指導部は、人民解放軍が技術や能力においてアメリカやその同盟国の軍隊を凌駕することを目指すと公言している。AIはその核心部分だ。
中国は習近平(シー・チンピン)国家主席の言う「100年に一度の大変革」を追求し、ロシアやイランなどアメリカと対立する国々との関係を強化しつつ、今世紀半ばまでに経済や地政学の分野だけでなく技術面でもアメリカをしのぐ存在になることを目指している。
技術情報移転への危機感
ドナルド・トランプ前米大統領の時代には米中関係が極度に悪化し、アメリカにいる中国人研究者に対する監視の目が厳しくなった。政権末期の20年には、中国軍と関係のある中国人大学院生の入国を禁じている。
現大統領のジョー・バイデンも、中国によるアメリカ製技術の取得を懸念し、AI技術など機密性の高い技術の移転に制限を課している。
この問題の重要性に鑑みて、バイデンは10月30日に大統領令を発し、「アメリカがこの領域で先頭に立って」安全性とセキュリティーの基準を高める意図を表明した。
この記事に関連するニュース
-
航空宇宙・防衛産業に優位性持つ米アリゾナ州、防衛関連アクセラレーション施設開設など新たな動きも(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月1日 0時10分
-
ニュースの核心 「無意味」だった台湾の防衛戦略大転換か 決め手は米軍ドローン「地獄絵図」作戦 中国が侵攻を躊躇「ヤマアラシ化」が抑止力に
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月30日 10時0分
-
「反共主義」のためならナチスの残党も利用する…長らく"孤立主義"だったアメリカを大きく変えた「2つの脅威」
プレジデントオンライン / 2024年6月25日 9時15分
-
「中国系頭脳」が"米国に流出"生成AIの熾烈な争い 動画生成「Pika」は華人・華僑の女性達が起業
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 13時30分
-
〝UFO議連〟設立総会 基調講演は元米国防次官補クリストファー・メロン氏
東スポWEB / 2024年6月6日 14時53分
ランキング
-
1ニシキヘビが女性丸のみ、腹から遺体発見 インドネシア
AFPBB News / 2024年7月3日 17時59分
-
2ハリス副大統領が最有力候補、バイデン氏選挙戦から撤退なら=関係筋
ロイター / 2024年7月4日 0時8分
-
3英総選挙きょう投開票、「穏健」労働党が大勝見込み…スターマー党首が左派色改め現実路線へ回帰
読売新聞 / 2024年7月4日 9時46分
-
4米民主党の下院議員、バイデン氏に大統領選からの撤退を要求 党内で進退巡り意見分裂
産経ニュース / 2024年7月3日 17時20分
-
5NATO、ウクライナ軍事支援で合意 来年400億ユーロ=外交筋
ロイター / 2024年7月4日 0時16分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)