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猫はどこからやってきた?「愛すべきネコ君」と人間との共同生活の不思議な歴史に迫る

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月13日 19時47分

しかし基本的には、ほとんどヤマネコと見分けがつかない。家畜化の過程で自然淘汰によって変化した遺伝子は13個しかない。ちなみにオオカミがイヌに進化する過程では、その3倍近い遺伝子が変化している。

ヤマネコとイエネコの決定的な違いは2つだけだ。まずは脳の大きさ。どの家畜でもそうだが、イエネコでは攻撃性や警戒心などに関与する脳の部位が小さくなっている。

そして腸の長さ。イエネコでは、飼い主から与えられる植物性の餌を消化するために腸が長くなっている。

家畜化の過程では習性も大きく変化した。イエネコは孤高で素っ気ないというのはネコ嫌いの偏見にすぎない。

たくさんのネコを一緒に生活させれば、彼らもライオンと同様に群れを形成する。群れは母系で、同じ群れに属するネコはみんな仲良しだ。互いに毛づくろいをしたり、遊んだり、授乳したりする。

仲間に近づくとき、イエネコは尻尾をピンと上げる。これは友好のサインで、ライオンには見られるが、他のネコ科の動物には見られない。イエネコはこのサインを飼い主にも示す。彼らが人間を自分たちの仲間と見なしている証拠だ。

人を操るイエネコの進化

そしてイエネコは、飼い主に対して声で要求する。さまざまなメッセージを伝えるために鳴き声を使い分けている。

ただし尻尾を立てる行動と違って、それは人間を自分の仲間と見なしている証拠ではない。ネコが互いにニャーニャー鳴き合うことはめったにない。

ネコの鳴き声は家畜化の過程で、人間との意思疎通を図るために進化した。野生のネコの鳴き声は、イエネコの優しい「ニャーオ」と違って、もっと緊急性を帯びた「ニアーーオウ!」に聞こえる。

イエネコの「ニャーオ」は高音で短く、人間の耳に心地よく響く。ちなみに人間の子の声もピッチが高い。それを知って、イエネコは自分の声を進化させたのだろう。

ネコは、喉を鳴らす音も使って人を操る。何かが欲しいときは特に激しく喉を鳴らす。それは満たされたネコの喉鳴らしとは違い、何としても注意を引こうという決意の籠もった執拗で連続的な音だ。

この2種類の音のスペクトルをデジタル処理で比較すると、激しい喉鳴らしの音は人間の赤ちゃんの泣き声に似ていることが分かった。もちろん、人間はこのスペクトルの音に敏感だ。イエネコはそれに気付き、この音を出すすべを学んだらしい。

ネコ好きの人ならご存じだろうが、ネコを訓練することはできる(餌で釣ればいい)。だが、それ以上にネコは飼い主を訓練する。昔から言うではないか、「イヌは飼い主に仕え、ネコは飼い主を従える」と。



Paul Rogers, Professor, Arts & Sciences at Washington University in St. Louis


This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.


ジョナサン・ロソス(セントルイス・ワシントン大学教授、進化生物学)


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