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組み立て式で「エアレス」!? UEFA公式球も製造する日本企業が不思議なサッカーボールを作った理由

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月10日 17時40分

2005年に国内リーグがプロ化されたカンボジアでも、サッカーは大人気だ。「現地の子どもたちにとって最適なボールなどのグッズを考える」を当初の調査テーマにしていた内田氏だが、子どもたちへのインタビューや現地での体験を経て、その問題意識は大きく転換することになった。

ボールの良し悪しよりも前に、大好きなサッカーで将来の夢自体を描けないほどの生活環境や社会状況に起因する子どもたちの自己肯定感や自己効力感の低さに気づかされ、その解決策も考えるようになったのだ。

一方、これまでにも日本から支援の一環として、ボールや道具を途上国に寄付することはよくあった。寄贈するためのボールを安く大量に製造できないかという相談を引き受けることも多々あった。ただ、裾野にあるのは、現地でボールがパンクしたときに修理をすることが難しかったり、輸送するための梱包が嵩張りコスト増につながったりと、ボールを贈るだけでは解決しない問題だ。

そこで内田氏は、ただボールを贈るだけではなく、贈った先にいる子どもたちが成長するきっかけを届けること、そして環境に配慮した素材で「エアレス」なボールを開発し、その持続可能なボールを提供することという2つのコンセプトにたどり着く。モルテン社内でもこれまでにない挑戦的なプロジェクトの枠組みとして始まったという。

nendoが参画、組み立て式を採用した利点

企画の初期段階からデザインパートナーとして参画したのは、東京オリンピックの聖火台やフランス高速鉄道TGVの内装、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の「日本館」総合監修等で世界的な評価を得ている佐藤オオキ氏率いるデザインオフィス「nendo」。nendoから提案された複数のプロダクトデザインから、竹鞠やセパタクロー(ネットを挟み、足や頭を使ってボールを相手コートに返し合うスポーツ)のボールの構造に着想を得た、組み立て式の案を採用した。

デザイン案の構造を実現するエンジニアリングはもちろん、モルテンらしい使用感にもこだわり、大きく5段階くらいの開発ステップを経ながら、試作のプロトタイプは100パターン近くにも上ったそうだ。

素材は再生ポリプロピレン約70%に、エラストマーを配合。社内エンジニアとも試行錯誤しながら、工具は使わず、3種類のパーツを開発した。再生紙の組み立て説明書は、イラストを主体にして「無言語化」されており、色弱の人にとっても見やすいようなデザイン。全ての子どもたちが考えて組み立てられる仕様になっている

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