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【Q&A】どこが画期的? 費用は? アルツハイマー新薬「レカネマブ」をめぐる、さまざまな疑問に答える

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月14日 14時10分

アルツハイマー病の原因となるアミロイドベータの沈着(イメージ) ARTUR PLAWGO/ISTOCK

<世界初のアルツハイマー病治療薬はどこまで期待できるのか>

去る9月25日、アルツハイマー病の進行を抑制する世界初の治療薬レカネマブ(製品名レケンビ)の製造販売が日本でも承認された。開発したのは日本のエーザイと米バイオジェン。7月のアメリカに続いて日本でも認可が下りたことで、両国合わせて700万を超える患者にとっては朗報となりそうだ。

ただし、過大な期待は禁物。治癒につながる特効薬ではないし、症状の悪化を遅らせる効果も限定的だ。長年にわたるアルツハイマー病とレビー小体型認知症の研究を踏まえ、この話題の新薬について専門家の立場から解説してみたい。

■レカネマブはどういう薬で、どう作用するのか?

私たちの脳には「アミロイドベータ」と呼ばれるタンパク質が自然に存在するが、アルツハイマー病の患者ではこれが神経細胞の周りに凝集してプラーク(細胞外沈着物)を形成し、神経の働きを阻害している。レカネマブはこれに取り付いて無力化するモノクローナル抗体で、2週間に1回、およそ1時間かけて点滴で投与することになっている。

ちなみに「抗体」とはY字形のタンパク質で、血流に乗って体内を巡り、細菌やウイルスのような異物を排除する役割を担う。なかでも「モノクローナル」と呼ばれる抗体は、クローニング(単一の細胞をそっくりコピーする技術)によって無限に複製される。

■どこが画期的なのか?

早期段階の患者にとっては画期的な薬かもしれない。アルツハイマー病患者の脳に蓄積したアミロイドベータを取り除くことで、症状の進行を遅らせる効果が期待できる。
臨床試験の結果については、2つの論文が発表されている。

1つ目は今年1月のもので、臨床試験第3相の結果を報告している。被験者は1795人で、その半数にはレカネマブを、残りの半数にはプラセボ(偽薬)を投与した。結果、レカネマブを投与した患者には統計的に有意な効果が認められ、安全性に関する要件も満たしていた。画像診断や血液検査でもアミロイドベータの減少が確認されたという。

また患者の神経細胞内に蓄積して機能を損なう「タウ」タンパク質の減少も確認され、脳の損傷や変性の度合いを示すその他のタンパク質の減少も確認された。

もう1つは昨年12月に発表された論文で、こちらは856人が参加した臨床試験第2相の結果を報告している。ここでもレカネマブを投与した患者では、脳の画像診断でアミロイドプラークの有意な削減が認められ、血液検査でもアミロイドとタウの数値低下が見られ、症状の進行が抑制されていた。

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