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トランプ政権下で国家機密の漏洩事件を引き起こした女性の実像、映画『リアリティ』

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月17日 19時14分

映画のプロローグとその意味

本作でまず見逃せないのは、冒頭に非常に短いプロローグがあることだ。場所は、リアリティが契約社員として働くNSAの施設にあるイラン宇宙軍室だと思われ、デスクに座るリアリティらしき人物の後ろ姿が見える。壁にはテレビが設置され、以下のようなニュースが流れる。

「ヒラリー・クリントン氏は最近の発言で、"ジミー・コミーの手紙と発言が落選の一因"と。その件が解任理由でしょう。先ほど発表されたトランプ大統領の手紙を紹介します。"コミー長官、司法長官と司法副長官の手紙を同封する。君のFBI長官解任を進言され、私は受け入れた。業務を停止し、直ちにオフィスから退去せよ。君には感謝している。私が捜査対象でないと3回、知らせてくれた。それでも司法省の見解に賛成だ。君は組織を生かせない。FBIには新しいリーダーが必要..."」

プロローグはそれだけで終わり、「25日後、2017年6月3日、ジョージア州オーガスタ」というテロップが入り、本編が始まる。

映画の中のリアリティ

このプロローグにはふたつの狙いがあるように思える。ひとつは、当時の状況や空気を思い出させることだ。

同封された司法長官と司法副長官の手紙では、コミー解任の理由が、ヒラリーのメール問題での対応の誤りにあるとされていた。しかしそれが理由であれば、タイミングとしてあまりに遅く、突然に見える。そのコミーは、FBIが2016年の大統領選に対するロシア政府の介入に関する捜査をしていて、それにはトランプ陣営の選挙活動とロシアの動きのあいだに何らかの協力関係があったかどうかに関する捜査も含まれるという声明を出していた。

ルーク・ハーディングの『共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』には、コミー解任に対する国民の反応が以下のように綴られている。

『共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』ルーク・ハーディング 高取芳彦・米津篤八・井上大剛訳(集英社、2018年)

「コミー解任に伴う世論は大統領にとって破滅的なものになるかと思われた。共謀の件については懐疑的だった人たちまでが、やはり何かあったのではないかと疑い始めていた。なぜコミーが解任されたのか、世論は納得しなかったのだ」

短いプロローグはそんな状況を示唆しているが、おそらくそれだけではない。もうひとつ興味深いのは、本編ではFBIの録音開始後の経過時間までもが途中で挿入されるにもかかわらず、プロローグでは日にちも場所も明示されないことだ。もちろん、「25日後」という情報から逆算すれば簡単にわかることだが、そこには狙いがあるように思える。

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