【MVP記念】100年の歴史に残る2023年の大谷翔平、その軌跡と舞台裏――地元紙の番記者による独占レポートを全文公開
ニューズウィーク日本版 / 2023年11月18日 18時10分
大谷のシーズンが終わっても、ファンはベンチに座っているだけの彼の写真を撮りたくて、試合中もダグアウトの後ろに詰めかけた。試合に出られなくても、大谷は笑顔でチームメイトと語らっていた。その姿に彼の野球愛がにじむ。
大谷は完璧さだけを追求する野球ロボットではない。彼は心から野球を愛している。だからこそ偉大な選手なのだ。そのスター性と野球愛に敬意を表して、MLBは大谷のために新たなルールを作った。
ア・リーグは1973年に指名打者制度を導入していた。投手が打席に立つことをやめ、代わりに打撃専門の選手を出場させられるようにした。どうせ打てるはずのない投手を打席に立たせるのはファンに対して失礼という判断があったからだ。
しかし大谷は投手でありながら、最高の打者でもある。だからエンゼルスは、大谷が投げる試合では打席にも立たせたかった。実際、21年のシーズンには大谷の登板試合の大半で指名打者を立てなかった。だがこのやり方には問題があった。投手として降板した後は、もう打席に立てなかったからだ。
そこでMLBは22年に、後に「大谷ルール」として知られることになる新たな制度を採用した。先発投手と指名打者の役割を分割し、同一選手が投手として降板した後も、指名打者として試合に残れるようにした。ほかの誰のためでもない、大谷の見せ場を増やすためのルールだ。
新ルールには、ほかのチームにも二刀流選手の育成を奨励する目的もあった。ルース以降、大谷の登場までに投打両方の能力を見せた選手は何人かいたが、大谷に近いレベルに達した選手は1人もいなかった。
エンゼルスの同僚パトリック・サンドバル投手は「大谷のレベルで二刀流をやる選手が出てくるかと言われれば、それは分からない」と言い、さらにこう続けた。「二刀流をやる選手は出てくると思うが、第2の大谷を期待するのは無理だな」
エンゼルスのミナシアンによれば、先発投手が途中降板した後は打席に立てないというルールがなくなったからこそ、大谷の起用法に関する制約を取っ払うという決断も生きた。実際、その後の大谷は期待以上のパフォーマンスを見せてきた。そしてミナシアンは、大谷という手本がいる限り二刀流に挑戦する選手は増えると考えている。
「それが人間の常だ」とミナシアンは言い、こう続けた。「誰かがすごいことをやるのを見れば、ほかの大勢の人もそれをやってみたくなる。実際にできるのは100万人に1人かもしれないが、挑戦して、成功する人は出てくるだろう」
この記事に関連するニュース
-
番記者に聞く大谷翔平MVPの可能性 “出口調査”で本音、ベッツ超えに必要な圧倒的成績
Full-Count / 2024年5月24日 8時0分
-
大谷翔平は「今後2度と投げなくても歴代最高選手」 元MVPが絶賛「驚異的だ」
Full-Count / 2024年5月21日 10時52分
-
大谷翔平は「二度と投げなくても史上最高」 元MVPが絶賛…1406盗塁の伝説と比べても「異論は難しい」
THE ANSWER / 2024年5月21日 10時33分
-
大ブーイングの大谷翔平を見て実感した“敵軍のスター” 元エ軍番記者が吐露した本音
Full-Count / 2024年5月16日 18時43分
-
制球とスピード、相容れない2つを両立させて球界の常識を覆した思考回路【大谷翔平「二刀流の血脈」父の教えと投打のスケールアップ編】#3
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月10日 16時0分
ランキング
-
1韓国、総選挙を終え日本との防衛交流拡大 影落とす前国防相の不正疑惑
産経ニュース / 2024年6月1日 23時2分
-
2ゼレンスキー氏がシンガポール入り=アジア安保会議で2日に演説
時事通信 / 2024年6月1日 20時16分
-
3フィリピンと中国、南シナ海の領有権争いで非難の応酬…米国「フィリピンが直面している嫌がらせは危険だ」
読売新聞 / 2024年6月1日 23時40分
-
4仏看護師「ディエンビエンフーの天使」死去 99歳 インドシナ戦争に従軍
AFPBB News / 2024年6月1日 16時9分
-
5米国防長官、中国との直接対話の意義強調…アジア安全保障会議で演説
読売新聞 / 2024年6月1日 14時32分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください