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自民党はなぜ杉田水脈議員の暴走を止めないのか

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月23日 20時57分

内閣支持率が最低を更新中の岸田文雄首相(7月11日、東京の自民党本部) Rodrigo Reyes Marin/REUTERS

<杉田水脈衆院議員は、一連の差別発言について反省するどころか差別を煽るような投稿を繰り返している。SNSを中心に支持者によるヘイトスピーチの再生産も行われている>

7年前のブログの記述が民族差別に当たるとして9月と10月に札幌と大阪の法務局から「人権侵犯」認定された自民党の杉田水脈衆院議員の暴走が止まらない。これまで数々の差別発言が問題になってきた杉田議員だが、今回の件を受けてもなお、自身の言動が差別であったことを認めず、ヘイトスピーチを更に重ねている。

杉田議員が折れないことにより、SNS等ではそれを応援する者などによるヘイトスピーチがむしろ激しくなっている。こうした混乱については、杉田議員が所属する自民党にも責任がある。だが自民党はいまなお、杉田議員に対する処分を下せていない。安倍晋三元首相の肝入りで優遇されてきた杉田議員を、内閣支持率が低下中の自民党は切ることができない。

懲りない杉田議員

「人権侵犯」に認定されたのは、杉田水脈議員が2016年(当時は議員落選中)に投稿したブログ記事での「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などの記述。これが、在日コリアンやアイヌへの差別だとされた。

しかし杉田議員といえば、これらの「人権侵犯」認定された発言以外にも、様々な差別発言、差別行為が問題になってきた。2018年に雑誌に投稿した、同性カップルは「生産性がない」という記述が問題になり、2022年に総務政務官を辞任したことも記憶に新しい。この「生産性」発言に対しては、性的マイノリティだけでなく、障害を持つ人や難病患者も傷つけるものだとして、そうした当事者たちも抗議を行っている。

他にも、性暴力被害者に対して「女としての落ち度があった」「女性はいくらでもウソをつける」などの発言が問題にされたこともある。杉田水脈議員はエスニシティにせよセクシュアリティにせよ、あらゆる方面に対してヘイトスピーチを繰り返している「常習犯」だと言ってよいだろう。

しかし当の杉田水脈議員は、一連の差別発言について反省する素振りすら見せず、X等で差別を煽るような投稿を繰り返している。その副作用として、SNSを中心に杉田議員の差別発言を擁護する動きが発生しており、そのことによりマイノリティへのヘイトが再生産されるという悪循環が生じている。

たとえば、「在日特権」というデマがある。日本にいる在日コリアンは、様々な優遇措置を国や地方から受けているというもので、10年ほど前「在日特権を許さない市民の会(在特会)」という排外主義団体が繰り返し主張してヘイトデモを繰り返したことで話題になった。「在日特権」の存在は様々な専門家により否定されており、たとえば比較的早期に在特会を取材したジャーナリスト、安田浩一氏の著書『ネットと愛国』でも、「在日特権」と呼ばれる数々のことはデマあるいは「特権」と呼べる代物ではないと示されている。。安田氏は2016年にヘイトスピーチ解消法が成立した際にも、テレビ番組で「在日特権」は存在しないという言質を自民党議員からとっている。

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