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音楽を奏でる天使たちの棲む、標高850メートルの山間に立つフランスの聖堂を訪ねて

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月29日 10時45分

新たな音楽活動についてのコンセプトが前提となるため、楽器の制作は学術的試みの結論を提示するものではなく、芸術創造に向けた制作過程へと開かれてある。

サン=ボネ=ル=シャトーのクラヴィコードについては、パースペクティヴによるずれや、縮小率を考慮しながらサイズを定め完成した楽器が、ブリッジと調律ピン板 (wrest plank) の間にある弦の共鳴により同形のクラヴィコードに比べ、より明るく響きのある音を作り出すものであることが分かった。

これに合わせ、オルガン、ラバーブ、リュートの制作を進め2025年の3月までの完成を目指したい。

2025年の秋には、ル・マンとサン=ボネ=ル=シャトー壁画から復元した楽器、ル・マン壁画から影響を受け制作された9つの《奏楽天使》壁画作品に関する美術史、音楽学、修復保存史の研究成果をまとめ、ストラスブール国立大学図書館展示室にて展覧会を開催する。

同時期に行う関連イヴェントとして、サン=ボネ=ル=シャトー壁画から復元した楽器を使用し、描かれた音楽を奏でるコンサートも予定されている。 

奇跡のように生み出され、私たちのもとに残された文化財は、こうして新たな芸術を生み出してゆく力となる。すべてが繋がり巡り、また新たな命を生み出してゆく循環を信じながら、文化継承の新たな試みが形になることを夢見ている。

勝谷祐子(Yuko Katsutani)
ストラスブール大学芸術文明歴史学研究所客員研究員、日本学術振興会特別研究員CPD-国際競争力強化研究員(國學院大學)。博士(美術史)。専門は中世ヨーロッパのキリスト教美術史。壁画を中心に研究を行い、アルプスの南北において1400年前後に見られた様式交流史、絵画技法、近代以降の保存修復史に関心を寄せる。ストラスブール大学博士論文をもとにした自著 Les peintures murales de Saint-Bonnet-le-Château. Le programme dévotionnel et dynastique (fin du XIVe-début du XVe s.), Brepols Publishers, 2023 を刊行。

※本書は2021年度、2022年度 サントリー文化財団研究助成「学問の未来を拓く」の成果書籍です。

  Les peintures murales de Saint-Bonnet-le-Château. Le programme dévotionnel et dynastique (fin du XIVe-début du XVe s.)「サン=ボネ=ル=シャトー参事会聖堂壁画研究-信仰と政治のプログラム」

  Yuko Katsutani[著]
  Brepols Publishers[刊]

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