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なぜアメリカは今、ウクライナのために「敗戦」を望むか

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月28日 18時48分

ロシアによるウクライナへの本格侵攻からほぼ2年。厳しい状況にもかかわらず、米バイデン政権がウクライナとの関係を断ち切る気配はない。「バイデン政権は、ある種のジレンマに直面している」とハースは言う。「バイデン政権には、私が指摘したことに共感はしても、バイデン政権とウクライナ政府との間に意見の食い違いがあるように見えるのは望まない人もいる」

 

同盟国と政策目標が一致しないというのはいつも気まずいものだが、より幅広い地政学的な動向は、必ずしもウクライナにとって有利なものではないとハースは警告した。「我々、そしてウクライナが有利な立場にあるうちに、今後についての決定を下すべきだ」

カプチャンは言う。米政府関係者は「ゼレンスキーにはまだ戦争を終わらせる準備ができていないと見ている。ウクライナ側にその気がないならば、西側諸国がそれを押しつけることはできない」。

ウクライナ侵攻は西側のツケ

「おそらく水面下では、この戦争をどう終わらせるのかという議論も議論が行われているだろう」と、カプチャンは言う。「だがウクライナ自身がそれを議論する準備ができるまでは表面化することはないだろう」

「だがウクライナもいずれは、西側から供与される資源を、いまウクライナの統治下にある82%の領土の防衛と復興に投じた方が賢明だと考える時がやって来るだろう」

西側諸国がたとえ短期的にでも降伏に等しい方針への転換を促した場合、ウクライナはそれを快く思わないだろう。ウクライナは2014年以降、ロシアと親ロシアの分離主義勢力との戦いで何万人もの犠牲者を出し、今回の戦争では2年近くの間に10万人以上の犠牲者を出したと考えられている。

ウクライナ国民は、西側諸国が2014年にプーチンの責任を追及し損ねたことや、ウクライナがソ連崩壊後の1997年に国内に残った核兵器を放棄(ブダベスト覚書)した後も安全保障を提供し損ねた「集団的な失敗」のツケを払わされている。プーチンがまたまんまと侵略の代償を支払わずに逃げおおせるなど、ウクライナ人にとっては耐え難いことだ。

西側諸国に支援疲れが広まっていることは、ウクライナ側も感じ取っている。ウクライナ保安庁の元幹部で現在はウクライナ議会の顧問(国家安全保障・防衛・諜報担当)を務めるイワン・スチューパクは本誌に対して、「この戦争を終わらせるためには、ウクライナは1991年の国境線を回復すること以外にも幾つかの選択肢を議論しなければならないのかもしれない」と述べた。「もしかすると、妥協点もあるのかもしれない」

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