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日本の学校教育では、明治時代から「ハモり」を教えるようになった...「和声学」を紐解く

ニューズウィーク日本版 / 2023年12月20日 11時0分

日本人による最初の和声学の著書は、明治41(1908)年に出版された『初等和聲學』だ。その標題紙には「嶋崎赤太郎閲 福井直秋編 初等和聲學 合資會社共益商社樂器店蔵版」と印字されている。

『初等和聲學』は何度も版を重ねているため、発行所名や責任表示が変わっている。したがって修訂増補版の標題紙では「島崎赤太郎閲 福井直秋著 初等和聲學全 東京 合資會社共益商社書店」となっている。

その『初等和聲學』修訂増補版では、「實際的に旋律の調和の一班を示す」ため、『小學唱歌集』初編所収の《大和撫子》冒頭8小節に付された和声が例示されている【譜例3】。

和声学の実習では課題の旋律を用いて、ソプラノ、アルト、テノール、バスという人声の音域を想定した4声部に仕上げることが多い。【譜例4】は【譜例3】を4声部にしたものだ。

【譜例3:《大和撫子》原曲】音源はこちら

【譜例4:《大和撫子》第1例】音源はこちら

先の『初等和聲學』修訂増補版には和声づけの例として6パターンが挙げられており、さらにそれらの応用について説明するための譜例が4パターン掲載されている。

その中の基本的な和声の3パターンについて少し説明する。前記の【譜例4】は1つ目のパターンである。最も平易な和声づけの例で、そのほとんどが【譜例1】と同様の和声進行、つまり主和音と属和音の連続となっている。

主和音は、音階の基礎となる音、音階の第1音の上にできる和音である。属和音は、主音に次いで重要な音、音階の第5音の上に構成される和音を指す。

【譜例4】よりも使用和音の種類を増やし、和音構成音の間をつなぐ経過音を交えるなど、少し変化させたのが【譜例5】だ。音楽はやや多彩になり、表情が豊かになったように感じられる。

【譜例5:《大和撫子》第2例】音源はこちら
  
以上はいずれもG dur・ト長調だが、次の【譜例6】は最後の2小節が転調し、近親調のD dur・ニ長調となっている。

【譜例6:《大和撫子》第3例】音源はこちら

以上の譜例には、いずれも和声学上の「間違い」はない。しかし、体系化された和声理論においては、「間違い」とされる和音の使い方や配置がある。

例えば4声のうち、ある2声が完全5度・8度の音程で並行することは避けなければならない「禁則」とされている。

各声部の動き、各和音の響き、調性の変化、そして禁則にも配慮しながら和声を検討するためには、理論への習熟だけでなく美的感覚が必要となる。音楽の「調和」という深遠なる世界には、和声学を通して分け入ることができるのだ。

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