国家内の分断「ハイブリッドな内戦」が始まる......すでに極右は主流になったのか?
ニューズウィーク日本版 / 2023年12月7日 19時0分
「Rich Men サウンド・オブ・フリーダム」という映画も「Rich Men North Of Richmond」同様に全く予想もしないヒットになった作品だ。児童人身売買をテーマにしたこの映画は、QAnonの陰謀論と相性がよく、トランプなどの保守系政治家が支持したこともあって陰謀論者に広がった。彼らは映画の支持のためにチケットを買うことを推奨していた。
Rich Men North Of Richmondやサウンド・オブ・フリーダムを支持する多くは、以前の記事に書いた格差底辺で不可視化された人々だ。政治、経済、文化のどこにも彼らの居場所はなく、置き去りにされていた。その結果、一部は陰謀論や白人至上主義などにのめり込むようになった。トランプは彼らの支持を獲得し、大統領になった。いま、彼らは自分たちが多数派であることに気づき始めている。音楽や映画が不可視化された人々に、自分が何者であるのか悟らせはじめているのだ。
ヨーロッパに極右はいない
不可視化された人々が多数派だという認識は、これまで自らを多数派と考えてきた人々にも広まっている。11月27日のタイムズの記事は、「極右」という呼び方に異を唱えた。なぜなら、ヨーロッパの主流はもはや彼らなのだから、「極」という言葉は当てはまらないというのだ。
正直、個人的にはそうでないと思いたいが、多くの国の選挙の結果はその可能性が高いことを示している。それでもかつての主流派の多くは、まだ自分たちを主流派だと考えているだろう。なぜなら、社会の多くの側面はまだ彼らを中心に動いているからだ。政治は交代が始まり変化が可視化されたが、文化ではまだそうなっていない。しかし、「Rich Men North Of Richmond」や「サウンド・オブ・フリーダム」のヒットは、文化面でも主役の交代が始まったことを告げている。
調査結果が示した反主流派の実態
極右、陰謀論者、白人至上主義者などを総称して「反主流派」と私は呼んでいる。多数派となってしまったので「反主流派」と呼ぶのには語弊がありそうだが、特定のイデオロギーを持たず、反エスタブリッシュメントや社会への不満で動機づけられているため「反主流派」という言葉が合うような気がする。
極右、陰謀論者、白人至上主義者などは異なるグループのように思えるが、特定のグループがその時々に合ったテーマに合わせて活動しているのが実態に近い。コロナのパンデミックの最中には反ワクチン、ウクライナ侵攻が始めればそちらについて発言する、といったぐあいだ。たとえば、2021年1月6日に、アメリカ連邦議事堂を襲った人々は、トランプ支持者であると同時に、陰謀論者だったり白人至上主義者などだった。
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