もう車が買えなくなったアメリカ人──年収10万ドルの壁
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月16日 16時35分
<アメリカンライフの象徴だった車だが、富裕層に引っ張られて価格が高騰したばかりでなく、そもそも「高級でない車」が市場から消えた。もはや人口の8割が車に手が届かない状況だ>
車を所有することは昔から、アメリカ式ライフスタイルの象徴で、車は必要なだけでなく、自由や自立、そして時には抵抗のシンボルとなってきた。だが2024年には、アメリカと車の蜜月関係が終わるかもしれない。多くのアメリカ人が車を買えなくなっているからだ。
新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、生活費は全体的に高騰しており、車にかかる諸費用や自動車保険、修理費用なども上がっている。
パンデミック中、自動車業界はサプライチェーンの混乱や半導体不足などの問題に見舞われ、新車価格も中古車価格も史上最高にまで高騰した。車の購入をサポートするAIアプリ「CoPilot」のデータによれば、2020年以降、新車価格は30%、中古車価格は38%高騰している。
物価上昇率が減速した2023年には、新車価格はわずか1%の上昇で平均5万364ドル、中古車価格は2%下落して平均3万1030ドルになった。
それでも多くのアメリカ人にとって、車がきわめて高価なものである現状は変わらない。CoPilotによれば、現在販売されている車で価格が3万ドルを下回るのは、全体のわずか10%。中古車市場でも、2万ドルを下回るものは全体の28%にすぎない。
車を買うのに必要な年収は10万ドル
金融関連ニュースサイト「MarketWatch(マーケットウォッチ)」の2023年10月のリポートによれば、アメリカ人が車を買うのに必要な年収は最低で10万ドルだ。
これを国際調査のデータに照らせば、アメリカの世帯の60%が「新車を買えない」状態にある。世帯ではなく個人ベースで見ると状況はもっと悪い。全体の82%が、年収10万ドルに満たないのだ。
CoPilonのパット・ライアンCEO(最高経営責任者)は本誌に対して、「とりわけ家計が苦しい消費者にとって、2023年は車を購入するのがきわめて困難な年だったことは確かだ」と語った。
「経済的に余裕のある人々がけん引する形で春には自動車価格が高騰し、それが完全に元の水準には戻らなかった。ほとんどのブランドや車種で、価格は年初以来ほとんど変化がなく、複数回にわたって利上げがあったことも考慮に入れると、車を購入する人々にとってお得な取引はあまりなかったと言えるだろう」
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