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敗者なき結果は民衆の「迷い」か「知恵」か、頼清徳(ライ・チントー)政権誕生の台湾新時代を読み解く

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月19日 17時17分

習が12年に着任してから、台湾問題ではいいところがなかった。

14年のひまわり学生運動でサービス貿易協定を台湾にほごにされ、歴史的なトップ会談となった習近平・馬英九(マー・インチウ)の15年の初会談もむなしく、国民党は翌16年の選挙で惨敗。

20年は勝てると思ったが、香港デモの影響で再び蔡に勝利を許し、アメリカはいつの間にか台湾を「半同盟国」であるかのように軍事的関与を強めるようになった。

「台湾解放」をレガシーとしたいと目される習にとっては屈辱以外の何物でもない。

そして今回も民進党の勝利を許してしまえば、平和統一は絶望的となり、残されるオプションは武力行使しかなくなる。

何より独裁化する習の「失敗」が確定してしまうのだ。

選挙期間中、中国メディアは野党の国民党と民衆党の連立に多大な期待を寄せる報道を展開した。

それも中国当局の「打倒民進党」の期待の表れだった。だが野党連立はならず、総統ポストはまたも「独立勢力」の手に落ちた。

それでも今回の結果は「立法院で民進党の牙城を崩せた」として、習の台湾政策は失敗していなかったと国内向けに強弁することも可能となった。

もちろん、「独立派」と有罪認定した民進党の天下が続くことは、世論対策的にも好ましくない。

台湾に対しては今後、軍事的威圧や経済制裁などの手段を講じてくるに違いない。

だが、大規模な軍事演習や、ましてや武力行使には至らないだろう。

対米関係の改善も途上にあり、国内経済の不振も目立つなか、中国も「次」に期待を寄せる総括を行うはずだ。

その意味では、中国も敗者ということはできない。

もちろん、アメリカをはじめとする自由主義諸国も、頼政権の舵取りに不安は抱きつつも、台湾の従来の現状維持路線と親自由主義諸国の外交を支持することに変わりはないのだから、当面は慌てる必要はない。

視界不良な多極化の時代へ

今回の選挙は、台湾の中でも外でも、何も得られなかったというプレーヤーはおらず、まさに「敗者なき戦場」だったのである。

曖昧な形となった選挙結果は、中国を抑制させながら台湾の主体性を守るための台湾の人々の「知恵」だとみることもできる。

一方で、米中のはざまでどちらに付くか、難題を突き付けられている台湾人の「迷い」も象徴している。

新型コロナの流行やウクライナ戦争の勃発と併せて「台湾有事」を不安視する声が世界にあふれ、台湾は米中対立の最前線に置かれることになった。

中国の脅威に対し、台湾の人々は片や兵役義務の延長を受け入れる現実感を持ちつつ、富裕層だけでなく中間層まで海外脱出のため日本や東南アジアに不動産を買っておこうという用心深さも持っている。

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