地球に優しい資産運用「グリーン投資」の手引き(後編)
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月19日 11時0分
<環境に対する問題意識を投資に生かす、温暖化危機の時代に目指したい持続可能な投資(前後編の後編。前編はこちら)>
そのESGファンドの看板に偽りはないか
ILLUSTRATION BY BRITT SPENCER
投資家にとってもう1つの手ごわい課題は、ファンドが触れ込みどおりの投資を行っているかどうかを見極めることだ。「誇大宣伝がまかり通っていて、ファンドの実際の投資内容を判断することが難しい場合がある」と、チェンは言う。
これは、米証券取引委員会(SEC)の規則が原因だ。そのルールでは、ある投資戦略にファンドが従うと標榜する場合(小規模企業に投資するとか、外国企業に投資するなど)、運用資産の80%以上をその投資戦略に沿って投資することを求めている。裏を返せば、20%は別の形で投資することが許されるのだ(このルールの適用対象として、これまでESG関連のテーマを掲げるファンドは明示されてこなかった)。
「化石燃料を生産する企業を避けていると銘打っているファンドがその種の企業に投資していれば、不満を抱く投資家が多いだろう」と、非営利団体「アズ・ユー・ソー」のデジタル戦略責任者を務めるアンドリュー・モンテスは言う。同団体では、サステナビリティーの観点からESGファンドを格付け評価している。
「ブラックロック・米カーボントランジション・レディネスETF」は、低炭素経済への移行により恩恵に浴せる企業に投資しているように見える。しかし、同ファンドの上位の投資対象企業は、電気自動車大手のテスラを別にすれば、アップル、アマゾンなど、気候変動対策と直接関わりがなさそうな企業だ(これらの企業は、多くのESGファンドの主要投資先10社に名を連ねている)。
しかも、同ファンドは、運用資産の8%余りを石油・天然ガス関連企業に投資している。そのためアズ・ユー・ソーの格付けは、化石燃料分野で「D」になっている(ジェンダー平等の「A」など、ESGのほかの分野での評価はもっと高い)。
それでも、SECが規則を変更したことにより、状況はいくらか改善しそうだ。「80%」という基準が厳格化されることはなかったが、ESGファンドを規則の適用対象とすることが明示されたのである。加えて、平易な言葉を用いるなど、投資戦略をより分かりやすく表現することも求められるようになった。ファンドには、規則変更に対応するために最大2年の猶予期間が与えられている。
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