「政治と関わりたくない人たち」がもたらす政治的帰結
ニューズウィーク日本版 / 2024年2月13日 17時0分
しかし、こうした分断の定義では、政治的なアリーナから完全撤退してしまった人たちを取りこぼしてしまう。「できれば政治とは関わりたくない」という人々にとってイデオロギーや党派性の意味は薄く、既存の分断の軸にはうまく位置づけられない。むしろ、「最小参加社会」日本における分断は、政治に(まだ)関与し続ける人々と、政治的な領域から撤退した人々の間にこそ立ち現れるのではないか。こうした関心のもと、「スマートニュース・メディア価値観全国調査(SmartNews Media, Politics, and Public Opinion Survey)」(以下、SMPP調査)では政治との距離を測る項目がいくつか盛り込まれた。
政治に対する忌避は、政治的疎外や政治的不信などの概念で研究されてきた。日本では、池田謙一が私生活志向という概念に基づいて、2000年代の小泉純一郎政権期にいくつかの重要な知見を提出している。しかし、2010年代に私生活志向に関する研究はあまり行われず、私生活志向が今の日本で上昇しているのか、私生活志向が何をもたらしているのかについての知見がアップデートされていない。そこで、ここではまず、過去のデータとSMPP調査を比較して私生活志向のトレンドを見てみよう。
池田(『政治のリアリティと社会心理:平成小泉政治のダイナミックス(2007)』池田謙一)によれば、私生活志向には「政治非関与」と「私生活強調」という2つの下位概念が存在する。ここではそのうちの「政治非関与」に注目する。政治非関与は以下の5項目で測定される。
・政治とは自分から積極的に働きかけるもの(反転項目)
・政治とは監視していくもの(反転項目)
・政治とは、なるようにしかならないもの
・政治的なことにはできればかかわりたくない
・私と政治との間に何の関係もない
この5項目のデータを合成することで「政治非関与」の尺度を作る。この尺度は0から1までの値をとるように変換されている。高い方が政治に関与しない傾向が強い、つまり政治との距離が大きいことを示す。まったく同じ5項目が測定された過去の全国調査データと合わせてプロットすると、図1のようになる。
図1 政治的非関与の推移
2000年代は0.35~0.4の間でほぼ安定していたのが、2023年のSMPP調査ではもっとも高い値になっている。SMPP調査が郵送調査であり、2000年代のデータが対面インタビュー調査である差異に注意する必要があるが、「政治とは関わりたくないし、監視もしたくない」といったような「私生活志向」は上昇傾向にあるのかもしれない。
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