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統治の不安と分断がもたらす政治参加

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月15日 17時0分

では、統治の不安は、社会の分断とどのように関わるのだろうか。本連載シリーズで見てきたように、我々の「スマートニュース・メディア価値観全国調査(SmartNews Media, Politics, and Public Opinion Survey)」(以下、SMPP調査)は、日本では米国とは異なる形での分断があることを示している。

日本の分断の軸として我々が注視したのは5つの分断軸である。既に今回までのシリーズで、分断軸1:「イデオロギー」(早稲田大学社会科学総合学術院教授 遠藤晶久)、分断軸2:「政治との距離」(早稲田大学政治経済学術院教授 小林哲郎)、分断軸3:「道徳的価値観」(東京工業大学環境・社会理工学院准教授 笹原和俊)、分断軸4:「リーダーシップ・スタイル」(東京大学大学院情報学環教授 前田幸男)が検討されてきた。今回は分断軸5の持つ意味をみよう。

国や社会の統治に対する市民の判断の乖離や差異が生む第5の軸、それが「統治の不安」である。社会や政治の将来の見通しの「悲観者」VS「楽観者」の違いは何かを見るのである。統治の不安が高く、分断を深刻に受け止めるとき、日本人は政治に関与し、分断を克服し、国の将来の不安を払拭しようと、政治に働きかけ得るのだろうか。

「分断」と「統治の不安」の二重構造が投票外の政治参加を促進する

日本社会の中の多次元的な対立の中で(遠藤記事)、今回は、全体として対立をどの程度、多様に認識しているかの尺度を作成し(対立していると認識する領域の数を加算:最大18ポイント:図2右)、この分断対立の軸と日本の民主的統治度の認識(図2左)が、日本人の政治への関与の中でいかなる意味を持つかを示そう。多変量解析という分析の手法部分は省略するが、見いだされたのは2点である。

図2

第1に、図3に見るように、投票に行くかどうかという制度化された政治参加には、国が民主的に統治されていると認識するほど投票するという度合いは高いが、統治の不安や対立の認識とは関連していない。これと対照的に、投票以外の政治への関与を示す投票外参加、つまり誓願書の署名、寄付やカンパ、地域ボランティア参加、政治家や役所との接触、市民運動・住民運動への参加、デモ参加などの行動に対しては、統治の不安の高さや対立の認知が強いことが促進要因であった。

図3

第2に、投票外参加の構造をより詳細に検討すると、図4に示すように、日本の民主的統治の度合いを低く評価し、しかも対立を強く認識していると、投票外政治参加は大きく促進される。図の最右の4本のバーは対立の認識が高いグループ内での統治度認識の差を示しているが、ここで差は最大となる。逆に、対立していても民主的統治度認知を信じる限りそれほど参加は推進されず、図の左側の対立認知の低いグループと参加度の差異はない。

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