「ザ・マッカラン1926」1本4億円! ウイスキー市場が、ここまで爆発的に高騰した理由とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月25日 18時5分
アメリカのバーボンも遅くとも16年以降、関心の高まりとともに価格が急上昇している。長年、スコッチの劣った模造品と見なされてきたジャパニーズウイスキーも価格が高騰している。サントリーは最近、1次流通市場で最大125%の値上げを発表した。
マッカランの落札直後、米辞書大手メリアム・ウェブスターは23年の「今年の言葉」に「authentic(本物の、真正の)」を選んだ。この言葉が流行した一因は、AI(人工知能)の進歩と誤情報だが、バーチャル化が進む世界で本物が求められるようになった結果でもある。人々は本物の体験、あるいはそう見える何かを求めている。彼らが購入する製品も例外ではない。
サザビーズで総額約180万ポンドの値が付いた「コダワリ・コレクション」 TRISTAN FEWINGS/GETTY IMAGES FOR SOTHEBY'S
ウイスキーの経済的価値は「認識」が決める
「真正性(authenticity)」は定義するのが困難な概念だが、内的または外的な基準との一致を重視する見方が多い。例えば、自分の心の声に従うことが最もリアルな本物の自分を引き出すというように。
製品の場合はビンテージカーやクラフトビールなど、職人技の手作りによる製品が真正と見なされるためには一定の基準を満たす必要があると言えそうだ。例えばクラフトビールのある定義によれば、少規模生産かつ自家製(単一の業者が内部で製造する)でなければならない。
この種の区分は一般消費者には理解が困難なので、真正性は容易に捏造可能だ。例えばビールブランドのサミュエル・アダムスは、アメリカ独立革命時代の人物や出来事を連想させることで真正性をアピールしている。だが同時に、自家製ではないのにクラフトビールとして売り込み、問題になってもいる。
ウイスキーを特別な存在にしているのは、アロマ(香り)、フレーバーの複雑さ、フィニッシュ(余韻)といった品質だ。だが、高級ウイスキーの販売業者は製品価値を高めるために伝統を強調する。
70年代から始まったスコッチの低迷期、生産者が大量に抱え込んだ売れ残りの在庫の多くは、オートメーション化、蒸留の高速化、新たな追加成分が登場する以前の60年代から製造・熟成されていた製品だった。より真正でシンプルなあの時代に戻りたいという消費者の願望に目を付けた生産者は、この在庫品の「ストーリー」を書き換えた。
今やスコッチウイスキーは歴史的に重要な存在であり、従って真正性も高いという定評がある。そのためスコッチのボトル価格は、同程度の熟成年数でフレーバーの複雑さも同レベルのカナディアンウイスキーの100倍もの高値が付くこともある。
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