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「日本語ロック」と「韓国語ロック」はなぜ同時期に誕生したのか?...「はっぴいえんど」と「シン・ジュンヒョン」の1970年代

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月10日 10時5分

音楽学者の申鉉準らによれば、「韓国語ロック」の成立過程は、1960年代までにGI文化として米軍によって朝鮮半島に移植されたポップ音楽が、翻訳と再創作を経て、若者自身によってつくり出されるまでの過程でもあった。

ハン・デス(한대수)、イ・ジャンヒ(이장희)、チョ・ドンジン(조동진)、ヤン・ヒウン(양희은)らの歌に表れる当時の若者文化の自意識は、軍事独裁政権下で政治的抑圧を経験することでより深くなっていった。

「フォークギター・ブーム」に乗って広がったそれらの歌は、若者たちにとっては「封建的で前近代的な因習に対する拒否反応であり、愛に対する伝統的観念との決別」であったという。

フォーク、ポップ、サイケデリック・ロック、ゴーゴー、ファンクなど次つぎとブームを起こし、明洞(ミョンドン)、鍾路(チョンノ)、新村(シンチョン)といった都市空間に若者たちの欲望を集めた70年代の「韓国語ロック」が、韓国のポピュラー音楽史に残した遺産はきわめて大きい。

ヤン・ヒウンの歌「朝露(아침이슬)」がさまざまな民主主義闘争の場で歌われてきたことからもわかるように、民主化以前の韓国社会における「若者文化」の原点はこの時代にあった。

2007年と2018年に実施された「韓国大衆音楽名盤100」の選定では、70年代のアルバム5作品が10位以内に選ばれるほど、いまもなお高い支持を得ている。

金成玟(キム・ソンミン)
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授。1976年ソウル生まれ。ソウル大学作曲科卒業。ソウル大学言論情報学科修士課程修了。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。専門はメディア文化研究、音楽社会学。東京大学情報学環助教、ジョージタウン大学アジア研究科訪問研究員などを経て現職。著書に『Postwar South Korea and Japanese Popular Culture』(Trans Pacific Press、2023年)、『K-POP――新感覚のメディア』(岩波新書、2018年)、『戦後韓国と日本文化――「倭色」禁止から「韓流」まで』(岩波現代全書、2014年)など。

  『日韓ポピュラー音楽史:歌謡曲からK-POPの時代まで』
  金 成玟[著]
  慶應義塾大学出版会[刊]

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シン・ジュンヒョン「雨の中の女人」(1964年)

내 속을 태우는구려/Various Artists

  




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