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一流科学誌も大注目! 人体から未知の存在「オベリスク」が発見される

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月5日 20時25分

生物、ウイルス、ウイロイドの構造の複雑さを比較するとき、ゲノムサイズはよく使われる指標です。ウイルスは数千~数万bpのサイズで、たとえば新型コロナウイルスは約3万bpです。一般に生物は数万~数千億bpで、ヒトは約30億bpです。ただし、生物の中で最も知能が高いヒトはゲノムサイズも最大というわけではなく、既知の生物ではアメーバの一種であるポリカオス・ドゥビウムが最大(約6700億bp)と考えられています。

ウイロイドは半世紀前に発見されて以来、植物への感染という形でのみ見つかってきました。しかし2019年頃から大規模な調査が進められており、動物や真菌、細菌などの遺伝情報のデータベースを分析した研究で「ウイロイドに似た環状RNAゲノムがありそうだ」という報告が続いています。

今回のスタンフォード大チームの研究目的は、もともとはヒトの口腔内や腸内に存在する様々な微生物に関する既存の遺伝情報データベースを使って、ウイロイドの候補となる環状RNAの配列を探すことでした。

472人から採集された約540万件の配列データを用いて、新しく開発したソフトウェアで解析しましたが、サンプルは唾液や便から得られたものなので多数の細菌やウイルスの遺伝情報がごちゃ混ぜになっています。たとえ環状RNAが見つかっても、細菌のRNAプラスミド(染色体外にある小サイズのRNA)やRNAウイルスの可能性があるので、研究チームは丁寧に検討してそれらを排除しなければなりませんでした。

精査した結果、ゲノムサイズが約1000bpの「ウイロイドのような未知の環状RNA」が2万9959個も見つかりました。

研究チームは、この約3万個の環状RNAに①ウイルスにしては小さく、ウイロイドにしては大きいゲノムサイズ、②古代エジプトの巨大な尖塔を彷彿とさせる、棒状で(ウイロイドと比べて)大きな外見、③ウイロイドとは異なる新しいタンパク質を構築するための設計図(コード)を持つ、という共通の特徴を見出しました。

そこでゼルデフ氏らは「発見した環状RNA群は、ウイロイドや小さいサイズのウイルスとは全く別の存在だ」と考え、「オベリスク(Obelisk;尖塔)」と名付けました。さらに、③の新しいタンパク質をコードする領域はオベリスクRNAの約半分を占めているため、作り出されるタンパク質を「オブリン (Oblin)」と命名しました。オブリンは、オベリスクの複製を担う重要なタンパク質と示唆されると言います。

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