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UNRWA地下にハマスのトンネル網があったとしてもイスラエルの免責にはならない理由

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月14日 17時40分

さらに、そもそもUNRWAはイスラエルにとって目障りな存在だった。

昨年10月以前からガザでは、およそ15年間にわたってイスラエル軍に包囲され、食料、医薬品、電気などの調達が難しい状態が続いてきた。この経済封鎖そのものが国際法に抵触しかねないもので、それを告発してきたのがUNRWAだ。

この背景のもと、ネタニヤフ首相はかねてから「UNRWA解体」を要求してきた。

その意味で、第三者による検証なしに「トンネル」の実態は断定できない。

国連のグテーレス事務総長は2月初旬、UNRWAの実態解明のための委員会を発足させたが、発見された「トンネル」も調査対象になるとみられる。

「UNRWA解体」の危険性

第二に、たとえトンネルがハマスの司令部だったとしても、イスラエルが求める「UNRWA解体」には問題が多い。

それがガザ全体の破局を招きかねないからだ。

UNRWAがハマスに肩入れしていたとしても、その一方でガザの230万人の生活にとっての生命線であり続けたこともまた確かだ。

国際的な人権団体などからも、もともと制約の多かったガザへの物資搬入が、昨年10月以降、イスラエル軍の包囲によってさらに難しくなっていると報告されている。

こうした状況のもと、UNRWAに代わってガザ市民の生活を支援できる体制がないまま、ただUNRWAだけスクラップすれば、それはほぼ自動的にパレスチナ人の人道危機に拍車をかけることを意味する。

多くのパレスチナ人がハマスを支持していることは間違いない。かといって、10月7日の民間人襲撃などによってハマスが負うべき法的責任まで、一般のパレスチナ人が共有しなければならないということにはならない。

それを無視してパレスチナ人全体の破局を黙認するなら、「よいインディアン(ネイティブアメリカン)は死んだインディアンだけ」と言い放ったアメリカ開拓民や、イスラエルを批判して「よいユダヤ人は死んだユダヤ人だけ」と叫ぶ欧米の差別主義者と基本的には同じで、そこには殲滅戦の思想があるといえる。

イスラエルの免責にはならない

そして最後に、「トンネル」がハマスのものだった場合、UNRWAやハマスは非難を免れないが、それはイスラエルの免責にはならない。

ハマスは1980年代、イスラエルによる占領に抵抗する組織として発足した。イスラエルは1948年以降、国連決議で「パレスチナ人のもの」と定められた土地まで軍事的に占領し、しかもその土地にユダヤ人を入植させてきた。

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