UNRWA地下にハマスのトンネル網があったとしてもイスラエルの免責にはならない理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年2月14日 17時40分
このうちガザは2005年、パレスチナ人に返還されたが、ヨルダン川西岸は今もイスラエルに実効支配されている。さらに、イスラエル政府は西岸にあるエルサレムを「首都」と定めているが、これもやはり国連決議に反する。
こうした占領政策がパレスチナ人の敵意と絶望感を招き、それがハマスを生んだのだとすれば、その環境を作ったのは他ならないイスラエルといえる。
こうしてみた時、「ハマスはテロリスト」というイスラエルの主張にも留意が必要だろう。
「テロリスト」と呼ばれないテロリスト
「テロリストが相手なら人権を無視しても問題ない」と思われやすいが、その呼称には政治的判断が作用しやすい。
1940年代後半からアジアやアフリカの各地では植民地支配に抵抗する勢力が台頭したが、その独立運動の多くは当時「支配する側」だった先進国で「テロリスト」と呼ばれた。
現代のパレスチナに関していえば、先進国はイスラエルの民間人を殺傷するハマスを「テロリスト」と呼ぶが、その一方で一般ムスリムまでも殺傷するユダヤ人入植者やイスラエル極右を「テロリスト」とは呼ばない。
国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ヨルダン川西岸では10月7日のハマスによる奇襲攻撃以前、2022年から2023年9月までの間に、入植者(その多くはイスラエル人極右)による襲撃事件が多発し、1100人以上のパレスチナ人が土地を追われていた。
これも立派なテロのはずで、民間人の人質をとったハマスとの間に大きな差はいが、当然のようにイスラエル治安当局はほとんど取り締まっていない。
こうしてみた時、UNRWAの「トンネル」は重大な問題であるとしても、それでイスラエルが免責されるわけでないことだけは確かなのである。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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