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サウジアラビア人社長の日本愛が創る「日本の中東ソフトパワー」

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月16日 17時30分

同作品は日本の東映アニメーションとサウジアラビア企業のマンガプロダクションズの合作であり、オランダのセプティミウス映画祭で最優秀エクスペリメンタルシネマ賞を受賞している。国際的に高い評価を得た作品と言えるだろう。

ただし、筆者が注目したポイントは、サウジアラビアが創ったアニメ映画が国際的なショーを受賞した、という表面的なことではなく、その映画のデザイン性・ストーリー性に強い日本に対するリスペクトを感じた点にある。

ハリウッド映画に顕著であるが、海外で制作されたアニメは日本のアニメファンが自然と馴染めるテイストにはなっていない。これは中国や韓国などの日本のアニメ制作の下請けから発展してきた地域のアニメでも同じだ。アニメを子ども用の娯楽と低く見る傾向や商業面を意識した見た目重視のキャラクターを推す作品群には、幼少期から日本アニメの深みに親しんできた筆者にはどこか馴染めないものがある。

日本とサウジアラビアの共同制作アニメが示す新たな可能性

しかし、上述のジャーニーにはそのような外国臭さが良い意味で少ない。どちからというと、できるだけ日本のアニメの良さを受け止めて、それを良い形で昇華させていきたいという意気込みを感じる作品であった。

その作品性に強い感銘を受けた筆者は、東京・虎ノ門にあるマンガプロダクションズ株式会社を訪ねて、CEOのイサム・ブーカリ氏に取材を申し込むことにした。

  

当初、筆者は中東の経営者と面と向かって話す経験は少ないため、一体どのような人物なのだろうか、と若干不安に思っていた。しかし、取材に応じてくれた、ブーカリ氏は柔和な雰囲気の好人物で、私からの突っ込んだ質問についても丁寧に答えてくれた。

実はブーカリ氏のメディア取材記事はネット上に幾つもある。しかし、どれも表面的なものばかりで、筆者が知りたいものとは異なるものばかりだ。

筆者が知りたいことはただ一つ、「なぜサウジアラビアの企業が日本のアニメ作りに限りなく近いテイストの作品を制作することを望んだのか」だ。その理由こそが日本が求めるクールジャパンによるソフトパワーの拡大の要になるポイントになると直感した。

ブーカリ氏の回答は実に明確なものだった。それは「アニメに対する単純な興味関心や営利性ではなく、日本人のより深い部分に着目しているからだ」という回答だった。


イサム・ブーカリ マンガプロダクションズ株式会社代表取締役 *筆者撮影

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