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アマゾン違法伐採の抑制、東南アジアでスマート農業を推進...「開発協力×宇宙技術」が変えていく世界【JICA×JAXA】

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月22日 16時0分

中村 最近はじめた取り組みとして、「水田由来の温室効果ガス削減プロジェクト」があります。実は、水田からは微生物の働きによって意外にも多くのメタンガスが排出されています。宇宙から「だいち2号」の衛星データを活用して水田の水位を測り、地上のIoTセンサーや排出量の算定手法を組み合わせることによって、収量を維持しながら水位をコントロールしメタンガスの排出は削減する、ということを目指した実証プロジェクトを進めています。これが可能になると、温室効果ガスの排出削減量を排出権として「クレジット化」でき、農家はクレジットを取引することで所得向上につながり、SDGsに掲げる貧困をなくすることにつながっていくと考えます。同プロジェクトは、昨夏よりフィリピンで開始し、タイやベトナムなど地域各国での実施も計画中です。ぜひこのような取り組みを、現地の事情に精通しネットワークも有するJICAと取り組んでいければと期待しています。

中村 また、この取り組みは、JAXAだけで進めていないことがポイントです。フィリピンの事例では民間企業、JAXA、ジェトロ、現地の大学・地方政府・農家が連携して進めています。多様なプレーヤーのグローバルなパートナーシップによってイノベーションが進み、将来的には民間事業化されて、経済の力でサステナブルな活動により社会課題が解決されていくことを目指しています。

高樋 是非、一緒にやっていきたいですね。2023年6月に改定された開発協力大綱では、「共創」と「国際頭脳循環※2」が鍵になると示されています。もちろん伝統的な政府間同士の取り組みへのニーズはあります。ただ今後、さらに地球規模の課題、途上国のさまざまな開発課題の解決に宇宙技術・衛星データを活用していくには、JICAとJAXAがハブとなって、スタートアップや大学・研究機関などさまざまなプレーヤーと連携していくことが重要だと考えています。

そのためには、例えば、人材育成を図るJJ-NeSTをプラットフォームとして立ち上げ、宇宙分野で産業振興を進める地方自治体や大学、地元企業と途上国をつなぐような取り組みも今後進めていきたいです。

※2国際頭脳循環...高度な技能や知識を持つ人々が相互に国を越えて交流・協働することで、グローバルなイノベーションを促進するプロセス

高樋俊介・JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室長

中村 2022年、JAXAが中心となり産学官が集い、衛星地球観測の力で共に未来を創り出すため、「衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)」を立ち上げました。現在、JICAも含め、参加する民間企業や地方自治体など200を超える組織や法人とともに衛星地球観測がさらに社会経済に貢献できるよう連携を始めています。私はこのコンソーシアムでグローバル展開を担当しているので、JICAとタッグを組んで、両機関がこのコミュニティの中心となるハブとなってさまざまな共創を生み出していければと思っています。

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