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事実認識が欠落したまま過熱するアメリカの移民論議

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月28日 15時45分

今回のアメリカにおける「移民反対」の論議は、こうした中南米情勢への関与も、関心も全く切り捨てたもので「怖いから反対」とか「ギャングやテロリストが入ってくるから反対」という印象論に終始しています。これでは問題は先には進みません。

  

第3の問題は、トランプ派の「流入ゼロ」という極端な政策です。特にベネズエラの困窮者、あるいは政府や警察から命を狙われている人々に関しては、国際法上も、またアメリカの法律上も、難民認定の候補になります。認定を厳しくすることはできるかもしれませんが、ゼロというのは非現実的です。このため、連邦議会では、上院が超党派の案、つまり難民認定枠を削減する一方で、国境警備費を増額する案を可決しています。これは下院でも審議されており、マイク・ジョンソン議長は、修正の上で可決するという選択が可能です。

ですが、トランプ支持の共和党右派は「移民ゼロ」を叫んでこうした現実的な案に反対しています。要するにこの問題を未解決にすることで、混乱の責任は全てバイデン政権にあるというイメージ戦略を継続したいのだと思います。これに対して、ジョンソン議長は「共和党の穏健派+民主党のほぼ全員」の賛成によって、法律を通すことは可能です。ですが、そうしてしまうと、右派は怒って議長の解任に動くことになります。現在はこの問題と、政府閉鎖の脅迫を含めて、共和党の右派は極めて強硬ですが、とにかく「移民ゼロ」というのは、国内法、国際法に照らして不可能だし、人道面からも不適当だという現実が無視されているのです。

このように、不法移民の定義、中南米情勢、難民認定の法的根拠といった事実認識が全く欠落したまま議論が進み、大統領選の争点になっているというのがアメリカの現状です。

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