ロシアの脅威を知り尽くしたスウェーデンがNATOを強くする
ニューズウィーク日本版 / 2024年2月29日 18時39分
歩兵部隊を支えるのは、高い攻撃力を誇るCV90をはじめ、500台前後の歩兵戦闘車だ。スウェーデンは2023年にウクライナに51台のCV90を供与した。
スウェーデン陸軍は2023年初めの段階でドイツ製の主力戦車レオパルト2を120台配備していたが、政府発表によると少なくともその「10分の1」はウクライナに供与したという。
陸軍はまた、口径155ミリのアーチャー自走榴弾砲を26台保有している。うち8台はウクライナに供与されたが、この榴弾砲は対砲兵攻撃を回避できる機動性の高さを特長とし、砲撃地点に到着して、弾を装填して3発撃って、撤収するまでに75秒足らずしかかからない。発射角度も変えられ、3発を同じ目標に対して違う軌道で撃ち、同時に着弾させることも可能だ。
この榴弾砲に搭載可能な砲弾のうち、最も射程距離が長いのは、アメリカ製のM982エクスカリバーで、最長で50キロ先の目標を攻撃できる。
とはいえ、スウェーデンがNATOにもたらす最大の貢献は、空軍及び海軍力の増強だろう。この国は3200キロ超に及ぶ入り組んだ海岸線、バルト海、そして北極圏も含む領空を防衛するために、空と海の守りを固めてきた。
スウェーデン空軍は国産の戦闘機サーブJAS39グリペンを100機前後保有する。グリペンは西側世界で最も多くの用途に使える戦闘機の1つと見なされ、ロシアの侵攻を想定した設計になっているため、ウクライナへの供与も検討されている。
RUSIの研究員、ジャスティン・ブロンクは2023年2月に、グリペンの特徴を次のように解説した。「明らかにロシア(の地対空ミサイル)迎撃のために開発された超音速ジェット機で、極めて低空を飛行でき、電子戦システムを内蔵している。整備をしやすい利点があり、車両で移動する機動部隊が広範囲に分散した基地から運用できる」
バルト海の制海権確保に果たす役割
グリペンは損傷した滑走路や高速道路でも離発着が可能で、ウクライナ軍に供与されれば、この点も大きな強みとなるだろう。
スウェーデン空軍はまた、偵察機4機を保有する。シギント機能(電子信号などの傍受による諜報機能)を持つ2機のガルフストリームG4と、2機の空中早期警戒管制機・サーブ340AEW&Cだ。
地上における防空システムとしては、アメリカ製の地対空防衛システム、パトリオットを4カ所に配備していて、射程距離最大120キロ前後のPAC3で敵のミサイルを迎撃できる。より短距離からの攻撃には、ドイツ製の地対空ミサイルIRS-T SLSや、国産の中距離全天候型防空ミサイルRBS23、同じく国産の携帯式地対空ミサイルRBS70で対応可能だ。
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