ガザ人道危機をめぐる中国メディアの主張──「ウイグル自治区の方がずっとマシ」にどう答えるか
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月7日 20時25分
<中国政府・メディアによる先進国へのダブルスタンダード批判は珍しいことではないが、単なる言い掛かりとして片付けることもできない。多くの国から、先進国と中国が「どっちもどっち」と見られれば、有利になるのは中国のほうだ>
・中国メディアGlobal Timesは「先進国はウイグル問題に懸念を示しながらガザ情勢を無視する」と批判する。
・先進国のダブルスタンダードに対する批判は中国の常套手段だが、指摘内容そのものは否定しにくく、実際に多くの新興国・途上国の支持を集めやすい。
・ただし、その中国にもパレスチナを支持し、即時停戦を求めながらも、イスラエルによる占領政策に協力してきた「やましさ」はある。
「むしろ先進国こそ不当」の論理
「先進国は新疆ウイグル自治区のムスリムのことに'懸念'を表明するが、ガザに暮らすパレスチナ人の困苦は無視している」。
中国政府系英字メディアGlobal Timesは昨年10月19日、このように主張して先進国を批判した。
その前日10月18日、国連ではウイグル自治区における人権侵害を批判するイギリス主導の共同声明に50カ国が名を連ねた。Global Timesの論説はこれを受けてのものだった。
ウイグル自治区では少数民族ウイグル人の間に共産党支配への抵抗運動があり、中国政府は「厳打」と呼ばれる苛烈な取り締まりを行ってきた。ウイグル人のほとんどはムスリムで、そのなかにアルカイダなど国際テロ組織に通じる者があることから、中国政府は「テロ対策」として弾圧を正当化する。
しかし、少しでも疑わしいと目された者が「再教育キャンプ」に放り込まれて共産党体制への恭順を叩き込まれたりする状況は、アメリカなどいくつかの先進国から「ジェノサイド」と呼ばれる。
こうした背景のもとで発表された共同声明に対して、Global Timesはかつてないほど人道危機の拡大するガザを引き合いに出し、イスラエルを支援するのが米英をはじめ先進国であることを指摘して、そのダブルスタンダード(二重基準)を批判したのだ。
ダブルスタンダード批判
中国の政府やメディアによるこうした批判は珍しくない。
それは単なるイチャモンとはいえない。アメリカや先進国は自由、民主主義、人権を強調するが、相手次第で態度を変えることも少なくないからだ。
例えば、先進国はしばしば、10億人以上の人口を抱えながら選挙を行うインドを「世界最大の民主主義国家」と持ち上げてきたが、極右的なモディ政権のもとで進むムスリム迫害についてはほとんどスルーしてきた。
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