ガザ人道危機をめぐる中国メディアの主張──「ウイグル自治区の方がずっとマシ」にどう答えるか
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月7日 20時25分
地政学的にインドの重要度が高いことを考えれば、やむを得ないかもしれない。
しかし、それは「人権を問題にするかどうかは先進国の都合しだい」といっているに等しい。それが多くの新興国・途上国に不当と映りやすいことは不思議でない。
とりわけガザ侵攻に対するアメリカなど先進国の微妙な態度は、グローバル・サウスで先進国のダブルスタンダードへの批判を増幅させている。。
イギリスが提案したウイグル自治区に関する共同声明に関して、中国の張軍国連大使が「先進国の偽善こそ、人権の発達を妨げる最大の要因」と激しく糾弾したのは、こうした文脈から出てきたものだった。
中国に「やましさ」はないか
もっとも、先進国にダブルスタンダードがあるとしても、それが中国の正当性を意味するとは限らない。
張軍大使はあたかも「ガザの状況よりよほどマシ」といわんばかりに、「ウイグル自治区の住民は社会的安定、経済発展、宗教的調和を享受している」と強調する。
しかし、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が2022年8月のレポートで、中国当局によるウイグル人の取り扱いに「人道に対する罪に当たる懸念」を示したことには「事実無根」と述べるにとどまり。都合の悪い情報を事実上スルーしている。
これに加えて、先進国のダブルスタンダードを批判する中国は、ガザ侵攻に関してパレスチナ、イスラエルに二股をかけている。
中国は1988年、いち早くパレスチナを「国家」と承認した国の一つで、ガザ侵攻をめぐっても「即時停戦」を求めてきた。
しかし、その一方で中国はイスラエルとも良好な関係にある。Global Timesが先進国のダブルスタンダードを批判しながらも、イスラエルを名指しで批判していないことは示唆的だ。
この関係を反映して、2021年10月に国連総会でウイグル自治区における人権問題を非難する43カ国の共同声明が発出されたとき、イスラエルは中国批判に加わらなかった。「イスラーム過激派のテロへの対抗」の論理であらゆる問題を封印しようとする点で、イスラエルは中国と共通するといえる。
ただし、その二股は結果的にイスラエルによるパレスチナ人弾圧に中国が加担することにもなっている。
昨年5月、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは中国メーカーHIKVISION製の顔認証機能付き監視カメラがイスラエル占領下のヨルダン川西岸に配備されていることを明らかにした。HIKVISIONのカメラはウイグル自治区でも住民監視に用いられているとして、アメリカ政府のブラックリストにも掲載されている。
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