1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

30秒以内に検知...受精卵で父親由来のミトコンドリアが「消される」仕組みが明らかに

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月8日 21時30分

さらに18年には、アロファジーに必須な因子として、ALLO-1とIKKE-1というタンパク質を発見しました。ただし、それぞれのタンパク質が父性ミトコンドリアを排除にどのような役割を果たすのかは未解明でした。

本研究では、ALLO-1とIKKE-1の機能を解析するために、生きた線虫(C. elegans)の体内を動画撮影しました。C. elegansは身体が透明なため、体内の観察に適しています。その結果、受精直後に父性ミトコンドリアがオートファジーで食べられる様子を、世界で初めて詳細に捉えることに成功しました。

まず、ALLO-1の解析を進めると、ALLO-は1つの遺伝子から2種類のタンパク質、ALLO-1aとALLO-1bを作っていることが分かりました。この2つのタンパク質の配列の違いは最後の短い配列だけですが、主にALLO-1bが父性ミトコンドリアの分解を担っていることが分かりました。

次に、ALLO-1bはどの時期に、どのような方法で父性ミトコンドリアを分解しているのかを確認するために、線虫の受精をリアルタイムで動画撮影しました。すると、ALLO-1bは卵子に入ってきた精子由来の父性ミトコンドリアを受精後30秒以内に識別し、父性ミトコンドリアに向かって集まっていくことが分かりました。

一方、IKKE-1の構造は、哺乳類において機能が低下した不良ミトコンドリアをオートファジーで除去する際に働く「TBK1/IKKε」というタンパク質によく似ています。今回の実験では、線虫ではIKKE-1の遺伝子が欠けていると、ALLO-1bの集まり方が弱くなり、オートファジーが正常に起こらないことも明らかになりました。

つまり、線虫ではALLO-1bがまず父性ミトコンドリアを識別し、さらにIKKE-1の働きによって父性ミトコンドリア周囲に一定レベル以上のALLO-1bが集まることで、オートファジーが開始されることが示唆されました。

これらの結果から、研究チームは父性ミトコンドリアにはALLO-1bで識別される母性ミトコンドリアとは違う目印が付いている可能性に注目しており、今後はこの目印を解明することでミトコンドリアの母性遺伝の仕組みに迫れるのではないかと考察しています。

さらに、IKKE-1のアロファジーにおける役割とTBK1/IKKεとの類似性から、父性ミトコンドリアの除去におけるオートファジーの仕組みは、哺乳類での不良ミトコンドリア除去の仕組みに類似していると予測しています。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください