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「SDGs全てに貢献できる唯一の産業」観光が21世紀のグローバルフォースと言われる理由

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月12日 11時30分

ペルー北部アンデス山岳地帯のウトゥクバンバ渓谷で5〜15世紀にチャチャポヤ文化が展開した。その信仰の中心となった標高3,000mの台地上にそびえるクエラップ遺跡(西山徳明さん提供)

浦野 ペルー政府からは当初「南部のマチュピチュは観光客が多すぎて、訪れた人々の満足度が下がっているため、違う地域も開発を進めたい。日本はバランスの取れた観光開発をしているから、その知見を活かして支援してほしい」という要望がありました。

そこでまさに映画インディ・ジョーンズのように北部のジャングルに、なたを振って分け入って現地調査をしたところ、出てきたのがインカ帝国の遺跡だったんですね。ほかにもアメリカ大陸でも有数の落差を誇る滝もありました。チャチャポヤ文明があったのはアマソナス州というペルーの中でも最貧州ですが、観光開発をすることで経済が活性化する可能性があるとわかったんです。

多くの観光客が訪れるマチュピチュ(西山徳明さん提供)

小学生のころはインディ・ジョーンズになりたかったという浦野義人JICAタンザニア事務所次長。学生時代に考古学を学び、青年海外協力隊員として、ボツワナにて世界遺産の発掘調査、遺跡保護活動を行った。2009年からJICAに所属し世界のあらゆる観光案件に携わり、2011年からJICA南アフリカ事務所を拠点にアフリカ地域の観光分野支援に従事。2016年3月から産業開発・公共政策部にてJICAの観光開発協力を総括。2022年4月から現職

世良 聞くだけでワクワクするお話ですね。日本でもマチュピチュのようにオーバーツーリズムが問題になることはないのですか。

西山 例えば京都市では、インバウンド(訪日外国人客)が増えて市民がバスに乗れないという問題が起きていますね。岐阜県の白川郷では以前、観光客が100万人を超えたころ、大渋滞のせいで救急車などの緊急車両が通れず、住民の生命に関わる危機だということで住民が行政、専門家と解決策を検討し、10年ほどかけて課題を克服したという例もあります。

世界遺産登録5年後の2000年頃の混雑する白川郷(西山徳明さん提供)

浦野 これから観光開発が伸びていく中で、オーバーツーリズムになる地域は増えていきます。我々がペルーで行っている支援が日本のオーバーツーリズム解決のヒントになる可能性もあると思います。観光の分野は特に、日本も途上国にとっても共通の課題が多いのです。先進国である日本が一方的に知識や経験を教えるのではなく、お互いに学び合いながら課題に取り組んでいくことが非常に大切だと考えています。

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