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「SDGs全てに貢献できる唯一の産業」観光が21世紀のグローバルフォースと言われる理由

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月12日 11時30分

一方「非常に脆弱な産業」の一面も

世良 コロナ禍もありましたが、一方で観光業に依存するのは、リスクが高いのではありませんか。

西山 重要なのは「観光に頼り過ぎないこと」です。旅行者のうちビジネス関係は2割、残り8割は普通の観光です。ですから、コロナのようなことが起きると一気に来なくなりますし、非常に脆弱な産業でもあります。だから頼りすぎないことが大事です。途上国では自分たちが生きていくために生業としてきたことをやりつつ、観光にも手を出します。だから、いざという時に備える力を持っています。この点において、我々は途上国に学ぶことも多いのではと思います。

これからは観光が広がり、さまざまな産業に影響力を持つようになり、あらゆる人が関わらざるを得なくなるのではと話す西山徳明さん。北海道大学観光学高等研究センター教授。観光開発国際協力専門家。専門は建築・都市計画学、ツーリズム、文化遺産マネジメント。フィジー、ヨルダン、ペルーなどで国際協力を展開中

浦野 備えが非常に重要です。我々はUNWTO(国連世界観光機関)とともに将来的に何か起きたとき、どう動くかを事前に決めておく「危機管理計画」を作り始めています。

世良 具体的にどんな対策ができますか。

浦野 一番分かりやすいのは風評被害対策です。例えば、アフリカではどこかの地域でエボラ出血熱が発生すると、アフリカ大陸全体の観光客数が減るんです。でも、アフリカ大陸のどこで発生したのか、きちんとした状況を伝えることによって、観光産業における悪影響が抑えられます。どうやって正確な情報を発信していくか、どう発信するのが効率的なのかを事前に準備しておくと、何か問題が起きたときに初動が早くなります。

女性の社会進出にも観光が一役

進行補佐・JICA広報部・伊藤綱貴さん(以下、伊藤) 世良さんは2023年だけで6カ国に旅行したとのことですが、旅先ではどんなことをされますか?

世良 まず、その土地特有のご飯を食べます。現地で有名なアクティビティも体験しますね。

浦野 JICAはヨルダンのサルトという古都で現地の人の家を訪れ、一緒に料理をしたり、ローカルな食事を食べられたりする体験プログラムを行っているんですよ。

サルトで地元の女性が開催する料理教室を観光客が体験する様子(写真の一部を加工しています)(西山徳明さん提供)

浦野 ヨルダンといえばペトラ遺跡が有名ですが、ヨルダン政府からはヨルダンには他にも魅力があり、古都サルトの「歴史的な街並みを観光客が散策するようにしてほしい」という提案がありました。ただ、散策するだけでは経済的な利益は生まれませんから、体験型商品をどう戦略的に町にちりばめるかを考えます。イスラム圏の女性は外で働くことが難しいのですが、観光客向けに料理体験を提供すれば女性に収入が入ります。お父さんが稼ぎ頭で、お母さんは子どもの靴下を買いたいけれど、お父さんが反対して買えないといった時、観光客を相手に自ら開く料理教室で得た収入で子どもの靴下を買えます。観光開発が女性の社会進出を後押ししているのです。

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