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【本誌調査で判明】米政府、モスクワの大使館維持のためにロシア企業と契約 800万ドルの支払いは妥当か?

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月13日 13時30分

アレンによると、米大使館がロシア人職員を雇うのは必要不可欠な場合のみにせよ、雇えば必ず「あちらこちらに盗聴器を仕掛ける」と言う。「そもそもの初めから、これはカウンターインテリジェンス(防諜)の問題だと私は思っていた」と、アレンは本誌に語った。

「ロシアが米大使館を最大限スパイ活動に利用することは疑う余地がない」が、アメリカは「機密の通信と情報を守る極めて有効な手順や対応策を編み出している」と話すのは、米国務省の国際経済政策に関する諮問委員会の元スタッフ、スティーブン・マイヤーズだ。アメリカは80年代の経験から学んだ、というのだ。

「ロシアに払うカネがあるなら」

米大使館がロシア企業と契約を結んでいることが明らかになった時期は、ウクライナへの支援疲れが広がりだした時期と重なる。バイデン政権は610億ドルのウクライナ支援を盛り込んだ法案を共和党が多数議席を握る下院に通そうとして苦戦中だ。共和党内にはそれだけのカネを使うなら、メキシコとの国境警備に充てるべきだとの声もある。

昨年12月にピュー・リサーチセンターが行った世論調査では、アメリカ人の31%が米政府のウクライナ支援は多すぎる、29%がちょうどよい、18%が不十分と回答した。

英ランカスター大学のヒラリー・インガム教授(経済学)によれば、この戦争でウクライナが勝てるのかと疑う声も高まっているという。

戦争への倦怠感が広がるなかで、以前ウクライナ支援の法案に反対したこともあるフルチャーは、米政府の資金でロシア企業を儲けさせることに疑問を投げかける。

「アメリカの企業に発注して、アメリカ人の雇用をつくり出すべきだ」と、フルチャーは主張する。「他国と良好な関係を築くことの大切さは理解しているが、悪い行動を取っている国の経済を潤わせるべきではない。しかも、アメリカは莫大な債務を抱えていて、その金額は膨らみ続けている。よその国に、ましてやロシアに資金を流す余裕などない」

ジャーナリストのテムニッキーも、ロシアに対して通常どおりの接し方を続けることには反対だと言う。ロシアとの外交関係を縮小するべきだと考えているのだ。

「世界の国々は、安全でないと判断した国から大使館職員を引き揚げたり、敵国との外交関係を縮小したりすることがある」と、テムニッキーは言う。「ロシアは戦争を終わらせることに、交渉で戦争を終結させることに、明らかに関心がない。このような状況でロシアとの外交を前進させることなど不可能だ」

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