アメリカ国民の過半数は、現在の政治情勢に「うんざり」...原因は党派対立より深刻な、もうひとつの「壁」
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月15日 16時9分
<共和党と民主党の二極化だけでなく、政治に燃える人と燃えない人の分断が、民主主義を機能不全に陥らせる。本誌3月12日発売号より>
米大統領選の序盤の山場スーパーチューズデーが終わり、民主党も共和党も予想どおりの人物が大統領候補の座をほぼ確実にした。ここから先は、11月の投票日に向けた選挙戦が本格化する......はずだが、有権者は盛り上がっていない。
何カ月も前からそうだった。2023年9月のモンマス大学の世論調査では、民主党のジョー・バイデン大統領と、共和党のドナルド・トランプ前大統領の再出馬に対して、「とてもわくわくしている」と答えた人は40%以下だった。
同時期にピュー・リサーチセンターが行った調査では、現在の政治情勢にうんざりしていると答えた人が65%にも上った。ニューヨーク・タイムズ紙は24年2月、特に民主党支持者は、延々と続く政治危機への対応に燃え尽きを感じていると報じた。
前回20年の大統領選と同じ顔合わせになることが、盛り上がりに欠ける一因であることは驚きではない。しかし市民の政治関与を研究している政治学者として、筆者は現状を憂慮している。
有権者をうんざりさせているのは、政治の二極化だけではない。もっと別のものが、アメリカの民主主義の健全性を危険にさらしている。
11月の大統領選後には82歳になるバイデン AMANDA ANDRADE-RHOADESーREUTERS
政党が単なる利益集団に
アメリカの有権者の現状を語るとき、政治の二極化が大きな焦点になることは多い。民主党と共和党は互いに激しい嫌悪感を示し、アメリカが向かうべき方向性について、仮に本当は意見が一致していても、対立を演出したがる。
この嫌悪感の一部は、アイデンティティーに根差している。アフリカ系アメリカ人やフェミニストなど民主党と関連付けられる集団を好まない人たちは、共和党を強く支持する。キリスト教福音派や銃所持者など、共和党と典型的に関連付けられる集団を好まない人たちは、民主党支持を主張する傾向がある。
これが積もり積もると、民主党も共和党も、特定の集団とその利益を守ろうとする動物の群れのようになる。
しかし党派対立以外にも、現在のアメリカを引き裂く「もう1つの分断」があると、政治学者のヤナ・クルプニコフとジョン・バリー・ライアンは指摘する。それは政治的な活動をする人たちと、しない人たちの間の分断だ。
簡単に言うと、政治の話をしないアメリカ人が増えている。それは政治に興味がないからかもしれないし、政界のいざこざに嫌気が差しているからかもしれない。
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