アメリカ国民の過半数は、現在の政治情勢に「うんざり」...原因は党派対立より深刻な、もうひとつの「壁」
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月15日 16時9分
これは突然起きた現象ではなく、1980~90年代からゆっくりと拡大してきたトレンドで、民主主義の基盤を揺るがしている。
なにしろ、ネットやメディアにあふれているのは、声高に発言したい人たちの意見ばかりで(耳障りで、極端なことも多い)、幅広い一般市民の声を取りこぼしている。彼らは政治的な議論に加わらないから、実際に選挙でどのような意見を表明するかはほとんど分からない。
なかでも深刻な問題は、若者が政治に幻滅していることだ。彼らは二大政党のどちらの支持者とも見られないようにする。こうした無党派層は、投票に行くこと自体にも関心を示さない可能性が高い。
政治に幻滅するZ世代
現代の若者は、政治の二極化が進んだ時代に育った上に、政治や、選挙権があることがいかに貴重か認識していないことが多い。筆者のチームが以前、政治意識の世界的な調査をしたとき、若者は政治への関心は高齢者と同レベルだったが、投票を市民の義務と考えるレベルは低かった。
抗議デモに参加したり、政治的な組織に参加すると、時代の大きな流れの一部になった気がするという社会的な恩恵がある。それに比べると、投票に行くことは、より個人的な行動のように感じられる。その上、投票用紙に示されている選択肢に関心を持てなければ、投票に行く意欲はますます低下するかもしれない。
選挙に行くこと自体をやめてしまう若い世代の有権者は少なくない JABIN BOTSFORD ーTHE WASHINGTON POST/GETTY IMAGES
若い女性の政治参加を促す団体イグナイト・ナショナルと筆者が行った調査では、1996年以降に生まれた成人(いわゆるZ世代)に、アメリカの政治に幻滅した理由を聞くと、候補者が自分たちと違いすぎて、政治から切り離されている感じがすると多くが答えた。
08年大統領選はバラク・オバマ(当時は上院議員)の人種が、16年大統領選はヒラリー・クリントン元国務長官の性別が、その選挙を歴史的なものにした。だが24年は、大統領候補としては史上最高齢の白人男性2人が、いずれも2期目を目指してぶつかる。
現代人は忙しい。仕事と家庭とその他の活動の合間を縫って、ニュースを見たり、ソーシャルメディアで知った情報の事実確認をしたり、生産的な政治的議論に参加したりするのは容易ではない。
このため一般有権者の多くは、重要な争点のポイントを知らず、それについての二大政党の姿勢も知らない。対立する政策を比較したり、現在の経済の功労者や責任者も正しく把握できず、党派主義などの安易な手がかりを基に選択をすることになる。あるいは、政治そのものから遠ざかってしまうかもしれない。
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