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逃げるための時間はわずか4分! 「燃えやすく」「助かりにくい」現代の住宅...米データが示す恐ろしい現実

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月19日 20時30分

州当局や専門家は、家具にウレタンフォームを使うなとは言っていない。火災警報器などの安全策の重要性について意識向上を図れば、油断を戒め、死者数減少に役立つと主張している。ただし、最も効果的に対処できるのは住宅用スプリンクラーだけだと指摘する。

「正さなければならない問題はたくさんあり、そのために最も迅速で最も簡単な方法が住宅用スプリンクラーだ」と、民間研究機関ULの火災安全研究所(FSRI)でバイス・プレジデント兼エグゼクティブ・ディレクターを務めるスティーブ・カーバーは言う。「(スプリンクラーについては)非常に明確なデータがある。課題はコストだが、それもかなり削減が進んでいる」

建築基準による規制の難しさ

NFPAの20年の報告書によると、住宅火災で死亡する確率は、火災警報器やスプリンクラーが設置されていない住宅では、有線式の火災警報器やスプリンクラーが設置されている住宅に比べて9倍高い。それにもかかわらず、NFPAによると、50戸以上の共同住宅の3分の1しかスプリンクラーを設置していない。2戸以上の共同住宅は14%、一戸建て住宅はわずか2%だ。スプリンクラーの主な目的は火災時に人的被害を防ぐことだが、建物の被害を減らすこともできる。

スプリンクラーは室温が約65度を超えると作動するため、予期せず作動することは極めてまれだと、NFPAは説明する。映画などで一斉に散水する場面もよく見るが、火災の77%では燃えている炎の近くにあるスプリンクラーが1個だけ作動しており、散水による被害は最小限に抑えられるという。

アメリカでは州や地方自治体、管区ごとに建築規制を定める権限があり、建築安全の専門家で構成される民間機関の国際建築基準審議会(ICC)が定めた国際建築基準をモデルに、それぞれ基準を策定する。ICCは09年以降、全ての新築一戸建ておよび2戸建て住宅にスプリンクラーを設置するように求めているが、この要件を採用しているのはメリーランド州、カリフォルニア州、首都ワシントン、およびいくつかの小さな管区だけだ。

住宅用スプリンクラーの設置義務化には課題も多い VINCE COMPAGNONEーLOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES

全米住宅建設業者協会(NAHB)によると、46州がICCのスプリンクラー基準を拒否する法案を可決するか、スプリンクラーに関する規定を含まない建築基準を採択している。うち26州では、州内の自治体がスプリンクラーの規定を含む建築基準を採択することを禁止している。

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