バイデン政権のもとで息を吹き返すアメリカの「労働運動」...国民の67%が「組合を支持」する理由とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月23日 13時40分
ルーズベルトは労働者の権利を拡大 MPI/GETTY IMAGES
再生可能エネルギー産業の主要労働団体である北米労働者国際組合(LIUNA)のブレント・ブッカー議長は「今は連邦政府がゲームに参加している。それによって、再生可能エネルギーは労働組合が関わる仕事に変わった」と語った。
組合指導者たちはクリーンエネルギー以外にも、量子コンピューターやAI(人工知能)といった分野で進む技術開発に組合を参加させるには、今が絶好の機会だと考えている。CHIPS法では、半導体産業を援助して中国との技術競争に勝てるようにするため、540億ドルの連邦支出が組まれている。
バイデン政権の政策が実施されると、組合は南部への拡大も重視。南部は伝統的に反組合感情が強いが、電気自動車(EV)用バッテリーなど新技術の生産拠点を南部に移すメーカーが増えている。
EV用バッテリー工場は、既に組合活動の南部戦略の最前線だ。IT系ニュースサイトのテッククランチによれば、19年には稼働中の工場は全米でわずか2カ所だったが、昨年は約30カ所が稼働中か稼働予定で、その約半数が南部に集中。AFL-CIOは南部を中心にEV用バッテリーで30万人の雇用創出を見込んでいる。「南部は全ての成長計画に不可欠」だと、シューラーは言う。
延べ6週間に及んだストでEVは、UAWとフォード、GM、ステランティスとの労働協約改定交渉の争点の1つだった。10月30日までにUAWと3社が達した暫定合意には、ガソリン車からEVへの移行に伴う雇用確保も盛り込まれた。
ニューディール型組合の終焉
経済情勢が変化するなか、組合と企業は妥協して新技術に順応せざるを得ないと、鉱物採掘会社ザ・メタルズ・カンパニーのジェラード・バロン会長兼CEOは言う。同社はバッテリー用の金属の探査を行っており、22年に建設予定の精錬・加工工場での組合結成に干渉しないという協定をUAWと結んで話題を呼んだ。
「誰もが得をするシナリオは見つかる。ただし、それには双方が考え方を改めなくてはならない」と、バロンは言う。「組合員のために闘って、その産業自体が持続不能になっては元も子もない」
現代の経済の中で組合が渡り合うには、痛みを伴う何十年もの変化が必要だった。バイデノミクスに飛び付く組合は従来とはかなり違う。
現代の労働運動は1935年の全国労働関係法(NLRA、通称ワグナー法)の制定時に生まれた。NLRAは民間部門の組合が業界との長年にわたる衝突の末に勝ち取った画期的な法律で、労働者の基本的権利を保護する。大恐慌時代にフランクリン・ルーズベルト大統領がつくった下地が、主に製造業や産業別の組合の組合労働者が第2次大戦後の好景気に拍車をかけた時期に実を結んだわけだ。
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